第11話 敵はすべての部活!?
休み時間、俺は
「つまり、俺はずっと『鍵』を持っておけと」
「そうなるね」
手元には、会長から渡された一枚の紙。
そこには『鍵』を「守る側」と「奪う側」の規定が書かれている。
一、会計は、常に鍵を携帯すること。
一、鍵を奪える時間は、平日の放課後から午後6時まで。
一、生徒会室と職員室を除く学校敷地以外で、鍵を奪おうとしてはならない。
一、鍵を奪うことができるのは、部長と副部長に限る。
一、異なる部同士で
一、生徒会の他の役員が、これに介入してはならない。
「意外とルールはシンプルなんだな」
チェーンで振り子のように『鍵』をプラプラとしながら言う。
「
「おっと、悪い」
秋人に注意され、『鍵』を掌に引っ込める。
「ところで、このチェーンってなんなんだ?」
普通の鍵についているにしては長すぎる細長い
「会長の話によると、ポケットから落としたりするのを防ぐためのものらしいよ。そのチェーンをベルトにつけておいて、万が一落としてもすぐにわかるようにって。あと知らない間に盗まれたりしないようにっていう目的もあるみたい」
「へえぇ……」
まあ大事な『鍵』を常時携帯しなきゃならないのに、そういうことに対して無防備ではよろしくない。対策としては十分だろう。
しっかしこれをつけるのは……正直ダサいなあ。
腰にチェーン巻いてるなんて、田舎の痛い中学生みたいじゃないか。
これつけててセンスのない人とか思われるのは嫌だなあ……。
「てか本当にこの時間は大丈夫なんだろうな」
「ルールに書いてあるから大丈夫だよ。安心して」
「って言ってもなあ」
俺は周りを見回す。どことなく視線の中に野獣のような鋭さを持ったものがあって、背筋に寒気が走る。俺が『会計』になったという情報は、瞬く間に部活連中に広まってしまったようだ。気分は肉食動物に狙われる草食動物、ってところか。
まさに
「まあ参加できるのが部長と副部長だけで、部同士での協力禁止ってのはありがたいなな」
「そうだね」
もし体育会系の部活の奴らが大勢でかかってきたらひとたまりもない。昨日の剣道部のようなやつを何人も相手にするなんて、想像するだけで嫌になる。
「一応言っておくけど、僕も助けたりはできないからね」
「わかってるよ」
昨日会長が助けてくれたのも例外ということだ。つまり、これからは彼女や秋人が助けにくることは期待できない。
「ま、逃げ切りゃいいんだし、大丈夫だろ。いざとなれば生徒会室に立てこもるし」
「和真……すごく楽観的だね……。昨日襲われたっていうのに」
「何言ってんだ。昨日のは俺は何も知らなかったし、不意打ちだったんだぞ? それに……」
俺はよく知る幼なじみの顔を思い浮かべる。
「全部の部長が血眼になって襲ってくるわけじゃないだろ? 考えてもみろ、みゆきが部費目当てに俺に襲い掛かってくると思うか?」
俺がそう聞くと、秋人はこらえきれずにプッと笑いだす。
「たしかに、みーちゃんがそんなことに参加するのは想像できないね」
「だろ?」
本人の前で言ったらまた頬をハムスターみたいに膨らませて拗ねそうだな、なんて想像をしながら、俺は秋人と笑いあった。
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