第20話 玉名ラーメンを食べてみた
ラーメン屋『○琴』と赤い看板に黒い文字で大書されたその店は『ガソリンスタンドだった店舗を改装して作りました。』といった感じの外観で、入り口付近はきれいな改装がされているが裏手にはむき出しのコンクリが見える必要部分にだけ金をかける合理的っぽいお店だった。
ここも店外に料金表はなかったっぽいがガイドブック(5年前発行)に600円~と書いてたので「そこまで値上がりはしてまい」と気軽に入ることにした。
「いらっしゃ~い」
という女将のお迎えに店内をみると白い壁に赤いラインのアクセント、木製の机にクッション部分だけが赤いイスが並ぶお店だった。
店内は清潔で掃除が行き届いている。
『店内撮影禁止』という張り紙があったが、これも何となく「写真撮るよりもラーメンを食べて」と言われているようでこだわりを感じる。
まあ実際は変なトラブルにでもなったのだろうが(厨房が見えるためスタッフの顔とかが写るお店だった)ルールにはちゃんと従う事にする。
「お荷物はこちらへ」と茶色い網かごを渡され、鞄を入れて座席の下に置く。
ああ、肩が軽い。
「すごく遅めの朝ご飯だけど、そんなにお腹すいてないし、ふつうのラーメンでいいかなぁ」と朝美ちゃんが言う。
私も同感だったので二人で通常のラーメンを頼む。
「へー、ここってだいぶ前からやってるんだねー」
みれば操業時からの皿が4枚ほど並び、店の変遷を伝えている。
昭和からやっている店っぽいが、店内のインテリアや衛生観念から古い感じはしない。
五分も待たないうちにラーメンが運ばれてきた。
すると女将が「こがしにんにく入れましょうか?」と訪ねてきた。
揚げニンニクや炒めニンニクをトッピングするのが玉名ラーメンの特徴らしい。
「大盛りでお願いします」と朝美ちゃんがお願いするとスプーン一杯の刻んだニンニクが投入された。
良い香りである。
「いっただっきまーす」と手を合わせてラーメンをすする。
天ぷらとピザとラーメンは、温かいうちに食べるに限る。
「おいしい!」
こがし醤油に豚骨風味のラーメンは熊本ラーメンより味が濃く、濃いめの味付けが好きな人の心に響く味付けだった。特にニンニクと食べると味わい・風味が倍加する。
昔食べた和歌山ラーメンを想起させるおいしさだ。
「すいません。ご飯大盛り追加で!」と朝美ちゃんがオーダーする。
大丈夫だろうか?
「大丈夫。これご飯と一緒にスープを食べると絶対おいしいから。由布ちゃんも少し食べてみなよ」
どうやら私の分も含めての大盛りだったらしい。
先に許可をとってから頼んでよ。
「はい、ご飯です」
そう言ってだされたご飯とたくあんが来たとたん、朝美ちゃんは真っ白いつやの入った炊き立てご飯を口に運び、レンゲですくったスープを口に入れる。
感想は無く黙々と食べるその様子に、私もつられてご飯をいただく。
おいしい。
濃いめのスープがご飯に中和されて程良い塩辛さになっている。この感覚が残った口にたくあんを運ぶとこれがまた絶妙に合う。さらに白米を口に入れスープを飲む。
これは病みつきになる味だ。
焦がしニンニクもふりかけのようなアクセントとなっており、それがスープをすっているので絶妙な味わいとなっている。ご飯で口がさっぱりすると再び麺をすする。スープの油で濃い口になった口にご飯を運ぶ。
気がつけば麺もご飯も無くなっていた。
「いやー、おいしかったー」
朝美ちゃんが初めて感想を漏らす。
さすがにスープ全部は飲めないが、それでも玉名ラーメンは絶品!と太鼓判を押したくなる味だった。
旅の疲れもあって体が塩分を求めていたのかもしれない。
ラーメン一杯600円にご飯大盛り300円を払うと幸せな気分で我々は店を出たのだった。
ラーメンの印象が強すぎて店内の様子はほとんど覚えてないが、隣の男性がラーメンを撮ろうとして店の人に「店内撮影禁止です」と制止されてた事だけは思い出した。
だめなものはだめらしい。
よい子も悪い子もマナーは守ろう。
なお駅前に無料配布されていた「玉名うまかめし」とかかれたガイドマップには、このお店を含めラーメン屋さんは掲載されてなかった。こういう所に観光が後手になっている感じがした。
(2020年1月には一部のお店が掲載されてました)
「次はドラマのロケ地、高瀬船付場跡に行こうか」
少し食べ過ぎて重くなったお腹をさすりながら朝美ちゃんが言う。
かなり遅めの朝食だったが美味しいものは人を元気にするものである。
意気揚々と東の菊池川を目指して歩きだした。
堤防があるため、少し上り坂となった交差点の先の高瀬大橋から右手をみると鉄製の陸橋がある。
ドラマで蒸気機関車が走った線路らしい。
ふつう、こうした近代的な建築物は大河ドラマだと邪魔になるのだが、逆にそのまま使えるのが近代大河のすごいところである。
橋はわたらずに陸橋を通り過ぎた所がロケ地らしい。
ドラマ館であれだけ放映されていたのに現地を見ようと言う酔狂人は我々だけらしい。むじんの河川敷をあるく。
ロケが終わって半年以上経過した河川敷は雑草が伸び始めている。
対岸では少年野球部が試合をしているのかかけ声が響いてくる。のどかな風景だ。
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