エンジェル・メーカー
@Keine
朝と夜の話
第1話 君と
僕が生まれた時に、既に神は死んでいたらしい。だからだろうか、僕らは快楽を求め、嘘を吐き、浮気をし、父母を敬わず、物を盗み、人を殺す。
罪とはなんだろうか、この世界から罪を無くすにはどうしたら良いだろうか。罪とは法律に違反する事だろうか、ならばこの世界から法律をなくせば人は罪を犯さなくなるだろうか。
僕が右の頬を殴られても左の頬を差し出せば人は罪を犯さなくなるだろうか。
罪を犯したとして代わりに何かを捧げれば、あるいは罰を受ければ罪は消えるだろうか。僕らは既に神の子を神への生贄に捧げた。
罪を犯した者への罰としてそのものを殺すのは、果たして罪ではないのか。
人は長い時間をかけて暴力を禁忌とした筈なのに、今この瞬間ですら戦争は起こり、多くの人権は消費され、少数の誰かが利益を貪っている。
神とは一体なんだったのだろうか、神は本当に死んだのだろうか。
「Gott ist tot. (神は死んだ。) 」
その言葉に込められた虚無感とその絶望を僕は知らない。しかし、僕には僕自身の良心と信仰がある。天にまします我らの父は浅ましき僕のことをご覧になられているのだろうか。
人の心は弱い。今悩んでいる僕も、多くの罪と最大の禁忌を犯した。
目の前で徐々に冷たくなって行く僕の最愛は最期に何を考えていたのだろうか。
仮定を作り、推論を重ね、自分に都合良い方向に現実を認識する。それが妄想と違わないものだとも気づかずに。聖夜に相応しい鮮やか過ぎるほどに赤い、彼女の首に巻かれたリボンはもともと何色だっただろうか。
窓からは過度に装飾された都心の光が差し、床に広がる液体に反射する。
僕は君を愛していたし、きっと君もそうだったのだろう。
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