比翼連理の双刃使い《デュアルセイバー》

天骨

プロローグ

「また明日」


そう言った幼い少女の顔は、靄がかりよく判らない。夕日に照らされた髪が光を反射して宝石のようにきらきらと輝いている。

その少女の言葉に答えたのはごく普通の少年った。


「うん!」


さようならの挨拶。再会の約束。

少年の満面の笑みは、少女と再会できる事を何一つ疑っていない、純粋そのものだ。

いつまでも、少女が見えなくなるまで手を振っていた。

でも、その二人の結末を自分は知っている。


翌日、少年が待ち合わせの森で待っていても、少女はやってこなかった。

純粋な心に影が落ちる。

春も、夏も、秋も、冬も。

晴れた日も、曇りの日も、雨の日も、雪の日も。

一年、二年、三年、四年……。

少年が待ち続けても少女は現れなかった。

心に落ちた影が全てを飲み込むのに十分な時が経ったころ。少年は気づいた。

「約束なんて、信じるものではない」と。


「あの時、あの子を引き留めていれば……。そのまま連れ去ってしまえれば」

そう思わずにはいられなかった。

引き留められる強さが欲しかった。

約束に頼らない強さが欲しかった。

おいかけられる強さが欲しかった。

今更願っても意味はない。そんなものではどうしようもない。それを分かっていながら、願わずにはいられなかった。

だってそれは、「運命の出会い」だったはずだから。それを手放してしまった自分を呪わずにはいられなかった。

深く心に刻まれた感情は、今も確かに残っている。きっとあれが恋なんだろう。

だから、今でも信じている。


「運命の出会い」はあるということを。



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