カラスの子

作者 河原 藍

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★★★ Excellent!!!

素晴らしい作品というのは、読み手から言葉を奪ってゆくもののようです。
いつも河原さんの小説を読み終えたあとは、わー! とか、ぎゃー! とか、ぬおおおお……といった、言葉にならない叫びや呻きをもたらします。

本作は機能不全家族がテーマになっていますが、その‪不条理は語り手である5歳の幼児の感覚や思考を通して伝えられるため、極めて抑制された、押しつけがましくない形で読み手に届きます。
丁寧に綴られた言葉や練られた構成、表現のひとつひとつにセンスが溢れ、文芸というものに対しこれほど誠実な書き手はweb界隈で見つけるのは難しいのではないでしょうか。

個人的な体験を記すのは純粋なレビューとしてふさわしくないかもしれませんが、自分もいとちゃんと同じ、今でいうところの毒親に育てられました。
18歳で家を出るまで、自分には人権もプライバシーもなく、親の機嫌のままに蹂躙されました(それでも親自身は「愛ある良い家庭を築いた!」「素晴らしいしつけをした!」と思っています)。
読んでいて何度となく胸の深いところをぐりぐりと遠慮なく抉られ、いとちゃんの感じる不条理を代理で言語化し、いとちゃんの代わりに苦い涙を流しました。

世の中には、万人に好まれそうな明るくポジティブな言葉や、おしゃれで甘い舌触りの、ちょっとした感傷やカタルシスの涙を引きだそうとする物語があふれています。
それはそれで多くの方に需要があるものでしょう。重くどろりとしたものがストレスになる人も多かろうと思います。
でも、わたしには。
あくまで個人的嗜好ですが、それらはどうしても物足りない。どこか異世界の花畑を眺めているような気分になります。
そうではなく、痺れるようなリアリティを備えたものや、言葉の奥に本物の痛みや思想を感じさせるもの、長い経験や特殊な体験から得られた金言を含むものを読みたいという欲求が抑えられません。
そうし… 続きを読む