Village Police

usagi

第1話 プロローグ:Village Police

久しぶりに夢を見た気がした。


広い部屋の真ん中に、空っぽのイスが一つ。

そのイスに対面する形で、僕は体を硬直させて座っていた。


こげ茶色のイス、グレーの絨毯や高い天井、梁や右奥の白い扉、、、その色や、湿った空気の香りは現実そのものだった。


起き抜けに夢を覚えていたことはなんだか新鮮だった。

明日からの新生活に対する不安が見せたものだろうか。だが、後味のよくない夢ではあったが、どこか懐かしさを感じされるものでもあった。


引っ越し作業が遅れ、出発までに部屋の引き渡しは間に合わなかったが、大家さんに無理言って、後でカギを送ることにさせてもらった。そのまま置かせていただくことになったベッドとカーテン以外はすべて引き払っていた。目覚めた瞬間、ここはどこかと一戸惑いを覚えるほどに別な空間となっていた。北池袋のワンルームマンションはとにかく居心地が良かった。キッチンは居間から独立して広く、料理好きの自分にとってはそこが魅力的で、住む決め手となったことを思い出した。


「あ、コーヒーメーカー、、、。」

赴任先に送ってしまっていたのを思い出し、スーツケースの脇に入れていた、どこかでもらったインスタントのスティックを取り出した。


あたりはまだ薄暗く、私鉄の踏切の音がまるでエコーがかかったように聞こえてきた。3月に入り、少し温かくもなってきたが、まだ朝は肌寒かった。


6時には出発しないと待ち合わせに遅れてしまうと目覚ましを4時にセットしていたが、夢のせいかアラームが鳴る前に目覚めてしまった。

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