ラブコメ小説談義。

2021年6月5日


 どうも、あじさいです。


 前回までしつこくお送りしていた「テンプレ小説談義」は、異世界転生系やチート系、ハーレム系などのことを筆者が強く意識しているから書くことにしたお話なのですが、あまり評判は良くないようで、PVが伸びません。

 我ながら思い上がりがはなはだしいのですが、筆者としては他のレビュワーやカクヨムユーザーがあまり言わないようなことを言ったつもりだったので、この結果は正直予想外でした。


 考えてみれば、このエッセイはそもそも、筆者の作品欄に未完の長編ファンタジーしか置いてない状況だと、アカウントに目をめてくださった方が逃げてしまうのではないかと危惧きぐして書き始めたものです。

 軽くて共感しやすい話をしなければ意味がありませんし、読者の皆さんもそういうものを期待して読み進めてくださっていたでしょうから、難しい話をするなら、このエッセイとは別の創作論や評論として書くべきだったかもしれません。

 自分で書きたいように書くだけならいざ知らず、人に読んでもらうことを意識して文章を書くなら、どのような読者にどういう読み方をしてほしいか意識することは非常に大切です。

 カクヨムで小説を読んだり書いたりして、テンプレ系マンガやアニメを読んだり見たりしていると、そのことをひしひしと感じます。

 このエッセイはその点の初歩的なミスをしてしまったようです。

 ただ、これもこのエッセイのテーマである「カクヨムでの試行錯誤」の一場面なので、削除したり大幅に加筆修正したりすることは今のところ考えていません。


 せっかくならこの話もしておこうということで、今回はラブコメについて語らせていただきたいと思います。

 先に言っておきますと、今回は主観的か客観的かで言えば完全に主観的な領域の話です。

 筆者はこういうラブコメが好きなのに、小説投稿サイトではなかなかそういう作品に出合えない、という不満を述べるだけです。




 言うまでもありませんが、ラブコメは恋愛(ラブ)とコメディ(お笑い)を合わせた言葉です。

 ですから、恋愛要素とコメディ要素をどちらも備えた作品であるならば、一応、ラブコメというカテゴリーにはなると思います。


 恋愛要素とコメディ要素はどちらも人々の興味をきやすいものです。

 流行のJ-POPの大半は恋愛について歌っていますし、幅広い層がTVを視聴するゴールデンタイムに君臨しているのはお笑い芸人がMCをつとめるバラエティ番組です。

 筆者もそういうものについて、大好きというほどではないにしても人並みには好きです。

 ただ、恋愛観は人それぞれですし、笑いのツボも人それぞれですから、中には人によって好き嫌いが分かれる場合もあります。

 それを踏まえて聞いていただきたいのですが、筆者は小説投稿サイトのランキングで上位に食い込んでいるラブコメ作品が、タイトルの時点で嫌いです。


 具体的なタイトルを出すと作者さんが不快な思いをされるかもしれないので避けますが、小説投稿サイトのランキングを見ると、上位のラブコメは大体3種類に分かれるようです。

 ひとつは「『俺』にそんなつもりはなかったのに、何だかんだあって常識外れの美少女が『俺』を好きになったようだ」というタイプ。

 もうひとつは「『俺』にそんなつもりはなかったのに、何だかんだあって複数の女子が『俺』を好きになったようだ」というタイプ。

 最後のひとつは「『俺』にそんなつもりはなかったのに、にせカノジョ、元カノあるいはセフレ(恋人ではないがセッ〇スをするフレンド)が『俺』に本気になったようだ」というタイプです。

 仮に、美少女タイプ、ハーレムタイプ、セフレタイプと言っておきましょう。


 もちろん、アマチュアが書いた男性向けのラブコメが、男性の妄想を反映した筋書きになるという傾向それ自体に、とやかく言うつもりはありません。

 作品を貫く意識が差別的あるいは女性蔑視的だとしても、一部の男性がそういうコンテンツを書いたり求めたりすることは止められないと思いますし、仮にそういう作品が流行はやったところで女性を抑圧する力とはならないでしょうから、無理に止める必要もないと思います。

 ただ、真剣に誰かを好きになった経験がある方ならお分かりいただけると思いますが、どのタイプをとっても、主眼となっているのは恋愛ではなく欲望(性的欲求)であり、その意味で、これらはラブコメではなく官能小説なんですよね。


 性的欲求や官能小説がそれ自体として悪いものだとは言いません。

 ですが、恋愛や人間同士の親愛の情が性的欲求に集約されるという考え方は、必ずしも絶対的なものではありません。

 また、はっきり言わせてもらえれば、恋愛を性的欲求や性的誘惑といった側面からしか描けないとしたら、その書き手さんの了見はかなり貧相だと思います。




 ここからは完全に筆者の主観の話になりますが、筆者が思うに、ラブコメというジャンルの神髄しんずいは、風や雨で女の子の下着が見えたとか、女の子が胸を押しつけてきたとか、セクシーお姉さんとロリ巨乳の板挟みになるとか、そういったことではありません。

 人が人を思いやり、気遣きづかって、いとしいと思い、友達の関係が壊れることを恐れながらも距離を詰めたいとも思って葛藤し、時には恥じらい、時には勇気を出して、相手への愛を自覚し、自分を見つめ直し、人を愛するための覚悟を決めていく。

 そして、そういった感情と価値観の揺れ動きが、キャラクターの言動や物語の仕掛けによってユーモラスに描かれていく。

 それがラブコメの良さなんじゃないでしょうか。

 というか、皆さん、どうせラブコメを読むならそういう作品を読みたいとは思いませんか?


 実際のところ、世の中には、強引なラッキースケベやヒロインの煽情せんじょう的な言動にばかり頼るのではなく、繊細な人間模様を主軸としたラブコメ作品が数多くあります。

 最近の漫画だけで言っても、『それでも歩は寄せてくる』、『好きな子がめがねを忘れた』、『お近づきになりたい宮膳さん』、『怪物少女は初恋の夢を見るか?』……他にもたくさんありますね。

 むしろ、どうして小説投稿サイトでは官能小説のようなタイトルの作品ばかりがランキング上位に入っているのか、ということの方が不思議なくらいです。


 筆者はこのような考えなので、ヒロインの容姿や学内評価を強調する美少女タイプだけでなく、ハーレムタイプのラブコメにも抵抗感を持っています。

 筆者としては、ラブコメの主人公には相手をかけがえのない存在として思いやっていてほしいのです。

 だというのに、複数の女の子たちに目移りして、何かあるたびに鼻の下を伸ばし、好意を示されても気付かず、どっちつかずの態度をとり続けるばかりでなく、女の子たちの方もそんな主人公を容認して同じテンションで恋愛感情をいだき続ける――そんな恥知らずなご都合主義がラブコメを名乗っていて良いのか、世間に問いたいレベルです。

 同じ理由で、セフレタイプも筆者にとって嫌悪の対象です。

 セフレだろうがレンタル彼女だろうが、相手と真剣に向き合う程度の甲斐性もないくせに恋愛の話なんかするな、相手が好意を持ったとしてもどうせ相手を傷つけるだけなんだから(それを回避できるだけの真剣さも覚悟もないんだから)すみやかにお断りしろ、と思います。


 筆者としては、そういう内容だとタイトルに書かれている時点で、主人公に対して好感が持てないという予想が立ってしまうので、わざわざ読むことはありません。

 何ならタイトルが目に入ることも不快に思っています。

 不穏ふおんなことを言うようですが、小説投稿サイトは多少頑張ってでも特定の言葉をミュートする機能を実装してくれないかな、と思います。

 嫌っているタイプのタイトルを繰り返し見せられるのって、意外とストレスですからね(笑)




 以上、今回はラブコメについてお話しさせていただきました。

 本当は、嫌いなタイプだけでなく好きなタイプのことも扱って、名前を挙げたラブコメ漫画について語りたかったのですが、それぞれについてあらすじを説明してから魅力を解説していたのでは長くなってしまいますし、ネタバレにもなりかねないので、割愛することにしました。


 ただ、在間ありまりしんさんの『怪物少女は初恋の夢を見るか?』について少しだけ。

 この作品は無料マンガアプリの「少年ジャンプ+」にも掲載けいさいされている隠れた名作なのですが、隠れすぎたせいか単行本3巻で完結を迎えてしまい、筆者としては寂しく思っています。

 もしかすると皆さんの応援次第で2nd Seasonが始まるかもしれないので、未読の方はぜひご一読いただいて、お気に召したら何らかの形で応援していただければ嬉しいです。

 「怪物少女は初恋の夢を見るか ジャンプ+」でネットを検索すれば出てきます。

 最初はシリアスなところがあって2話で一段落するのですが、基本的には1話ごとに問題が解決するコメディなので、手軽にお楽しみいただけると思います。

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