おとぎ話風のお話。交流すると消滅してしまうふたつの国と、その住人たちの物語。
なんというか、技巧がすごいです。どの要素をとっても「なにこれすっごいうまい……」となってしまう。
先を気にさせる話運び、余計なものがなく読みやすい文章、情景を鮮やかに想起させる描写に、しっかり起承転結している物語。
スルスル読めてしまって逆にすごさに気づけないタイプです。すごい。すごいのはわかるのに、今このレビューに何を書くべきかわからない。書きたい気持ちだけか空回りして、とにかくすごさに打ちのめされた感覚。
物語そのものもよかったです。この話の筋に対するイファとアダンの役どころというか、彼らがこの物語の真にしっかり存在しているところと、そしてその動きというか振る舞いが本当に好き。
そして結末、ある種悲劇的な展開でありながらも、でも確かに「めでたしめでたし」であるところも。とても素敵な物語でした。