第1話 奈落の底で

私の名前は三野 桜。何処にでもいる一般的な中学二年生。

…一つ違うところと言えば、ヲタクで腐女子なんだけどね。今日で一学期最後。明日からバンバン遊ぶ!そうずっと前から決めていた。まあ、あまりお金無いけど…。

って、校長先生の話長すぎ!!もうかれこれ二十分は経ってるよ⁉︎そう思いながら目だけで辺りを見渡すと結構ウトウトしてる人が多い。それはそうだろうな…頑張れみんな。

と、ふと女の子と目が合うと相手は軽くはにかんだ。

この子は草堂寺そうどうじ 葉月ちゃん。ここの地域では一番のお金持ちの娘さんで結構優しい。しかも美人。羨ましすぎる。自分だって…ってそんな訳ないけど。


すると、聞き慣れた名前が耳に入ってきた。

「皆さんもニュースで見たと思いますが、二年○組の暁月あかつき 潤斗くんが何者かに刺され、今も意識不明の重態です。皆さんも気を付けて下さい。また、この事件を見た人は必ず先生方に伝えるように…」

だんだんと耳が遠くなる。最後は視界まで暗くなった。



目を開ける。ここは…保健室?って、なんで私ベットで寝てるの⁉︎

勢いよくガバッと起き上がる。

「あ、桜ちゃんやっと起きた!大丈夫?急に倒れちゃって心配したよ〜。」

葉月ちゃんずっと付き添ってくれてたんだ…

「そ、そう言えば、さっきのって本当…なの?」そう葉月ちゃんに聞いた瞬間、笑顔が消えた。「そうだよ。まさかと思ったけど、本当だった。びっくりだよね。あの暁月くんが重態だなんて…。」

そう。暁月 潤斗、通称“潤ちゃん”は私の幼稚園の頃からの幼馴染みだ。

幼馴染みだからこそ、有り得なかった。

そんなどんよりした空気を吹っ切って、

「早く教室戻ろう?みんな桜ちゃんの事待ってるよ!」と葉月ちゃんが言ってくれた。「うん!」私は急いでベットから出た。



「遅いよ。三野。」教室に入った瞬間声を掛けられる。この子は根田 敦。

猫耳の生えたパーカーを着てて、よくフードを被ってる。しかもパソコンを扱うのが私より上手なんだ。正直、羨ましい。

「おーい三野、聞いてる?他の奴らが待ってるよ。」やばい、気付かなかった。「あ、ごめん。今行くよ。」敦が指を差す方向に目をやると、いつものメンバーが揃っていた。

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