グローズ・ファイア レッドフレーム
ハイド博士
第1話
キルド王国も数えるに173代の国王がこの国を守ってきた。その長い時の中で多くの戦いと血を流してきた。しかし、未だこの国は滅びずここにあり続けている。
「全ては未開の地に答えがある・・・」と過去の偉人は現代へ書物として言い伝えを残している。その地を見たものは未だにいないとされている。いや、ただ一人を除いて・・・
その盆地状の国土のほぼ中央まで馬車は進んできた。そして、そこには「バーン・ドレスド」、選ばれし者三人のうち二人とその仲間が乗り込んで居た。
「それにしても広いな・・・この草原と森は何処まで続くんだ。」
「そんな事はどうでもいい。それよりあいつは何物思いに耽っているんだ。」
旅路の途中で男はふと思っていた。少し前まで自分がこの大きな「運命の渦」の中にいた事さえ気付かなかった。しかし、今は確信があった。この旅の友たちと出会ったことは嘘偽りなく「必然の出来事」だったと・・・
ローガイエ領「ライガント」・・・この街はいつにも増して活気が溢れている。それもそのはず年に一度の「クランケット・ソース」があるからだ。王立剣士育成所「ブラケット・ブラケッツ」での選抜大会。もちろん王国剣士団(国王直属)に入ることはキルド国民が敬愛している由緒ある剣士団であり王国男子ならば誰もが憧れる存在だ。各領で同時期に行われており剣士団へ正式に入れるのは一年でわずか二十人もいない。そのための「大会」がクランケット・ソースなのだ。街中には人が溢れ領内から集まったツワモノがそこら中にいて見栄の張り合いから口論がそこ彼処で始まっていた。その中に一人だけ雰囲気の違う男が居た。急いで出場の手続きをする為に受付に走りこんだ。
「はい、はい!もう少しで受付が終わるよ」
「まだ間に合いますよね。ロック・リンクスです」
受付の女は彼を見て最初疑うような顔をしたが後ろから来た男を見て驚いた。
「貴方はエル・モント様ですね。このような場所に来られるとは・・・」
「いかにも私はエル・モント・・彼の推薦人だ。リンクス君は私が見るに今回の優勝候補の一人になると思うが受付はまだしているな」
彼の存在に気付いた多くの人は彼が多くの男たちはその若い男を睨むように見ていた。それもそのはずエル・モント卿はこのローガイエの内政執政官の重職にある人だ。その執政官の推薦で特別枠、つまり育成所の修練生と王国の認めた戦士・剣士以外のものは皆推薦者が必要でそれも単に予選会に出られるだけで本選には勝ち進まないと出られない。一大会予選には500組は出場するが本選に出られるのは僅か20組がいい所だ。
予選は3日間行われ6人対戦をして1人勝ち残ったものはランダムに一対一の対戦を、そこから修練を終えた新隊員との対決をした勝ち残りのみが本選に出場できる。本選としてさらに領内の「剣士団方面団員」と戦わなければいけない。そこで勝って初めて王国剣士団に入ることが出来る。
王立剣士育成所「ブラケット・ブラケッツ」にはこの時期だけ三千人を越える観客と500人の剣士や戦士が一堂に会している。とはいえ元々そう大きくは無い建物で出場者も観客もほとんど外にいる。
(野外演武場)
ここでは予選大会が行われ本選出場者しか屋内のコロッセオには入れない。その土を踏むのは数は少ない。会場はすでに多くの出場者が剣を交えていた。場内の剣士たちの中に一際強い男が居た。今回の優勝候補、去年は本選にも残り接戦で敗北したという男だ。
「つまらんな。相手になる奴はいないのか」
男の名を「ロッド・バイス」という。その男の余りの強さの前に挑戦者たちの殆どが数十秒で倒された。
「お、おのれ、もう一人になったか・・・ここで倒される訳にはいかない」
だがそれを見ていた若い男は「あいつはもう駄目だな」というと公爵も「あぁあいつごときに倒せる相手ではない」と言った。そしてその予想通りに残った一人もすぐに倒された。会場の熱気は本選が近づいて来ている事もあって高まりつつあったが、もうひとつそれを煽ってたの若き剣士の存在だ。その推薦人があの「エル・モント卿」となれば当たり前だ。彼は領主「シャロット・ポール・ガイス公爵」の次に位の高い存在でこのような闘技大会になど観戦したことなど一度も無かった。その血筋は領主よりも上でこのローガイエで知らぬものなどいない。そして、ついてリンクスが剣を手にした。
男たちは殺気立っていた。あのエル・モント卿が推薦する小僧がどれ程の手上のか知らないが彼らにはそれは気にならなかった。
「ハンズさん。あいつはこの俺にやらせてくださいよ。目に無いものを見せてやりますよ!」
ハンズ・フリーク。今回の優勝候補の一人にして男爵という名家の生まれで何より強い。過去にあの「モンド・バロック」に闘いを挑んだ男。負けはしたがバロックに「本気で戦ったのは久しぶりだ」と言わしめた野郎だ。闘技場の興奮は異常なまでに高まっていた。
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