タルトは渦巻いている

佐貫未来

第1話 四国ってどう行くの?

 堀江奈央は憂鬱だった。13年間、生まれ過ごした東京を離れ、四国に転校することが決まったのは一ヶ月前のこと。いわゆる、都会でしか生活したことのない私にとって、地方での暮らしなんてまったく想像ができなかった。

 思春期真っ只中での友達との別れ、新しい同級生とどう接すればいいのか、そんな不安を抱えながら私は新天地へと降り立った…。JR松山駅に…。


「終点、松山~。松山~。足元の段差にお気をつけください…」

 構内のアナウンスを聞きながら特急列車から降りる。降りて早々だが一言だけ愚痴らせてほしい。

「長…かった…」

 何が長かったって乗車時間だ。東京から岡山まで新幹線で3時間半、これはある意味想定どおりでスムーズに行くことができた。だけど…、

「なんで岡山から松山行くのに3時間かかるの…よ…」

 岡山についた時点では四国なんて目と鼻の先なんて考えていたけれど、実のところそれは大きな間違いだった。特急に乗って最初の30分間くらいは、岡山の都会的な町並みが車窓を彩っていたけれど、残りの2時間強は延々海と山だったといっても過言ではない。変わり映えしない景色に辟易していた。


「それにしても、電車で海を渡るなんて壮大なこと考えるものね。」

 さっきまで乗っていた特急列車を見返りながらひとりごちる。あたりまえだが、本州と四国の間には海がある。そしてそれをつなぐ橋があることもわかっていた。しかし、知っているのと体感するのとでは感動はひとしおだ。そして、勘違いしていたのだけれど、四国へと渡る橋は一本だけではなかった。何本もの橋と島を渡りついで遠く海を越えて四国へ上陸するのだ。考えてみれば当たり前か。

「まぁ、海の上の電車というのも悪くなかった。」

 そう、結論付けホームを後にしようとする。


 改札機に通すため、財布の中に入れっぱなしだった切符を取り出し、出口へと向かう。でも、そこで違和感を感じた。改札口…、狭くない?そもそも、改札機ないよね。駅員さんが改札口に立っている…。もしかして…。

「ご乗車ありがとうございましたー。乗車券お預かりしますー。」

「え、あ、はい。」

 言われるがままに、切符を渡して改札をでたけれど、つまりあれって…。

「駅員さんに渡すの…?え、カードでタッチもできないの?」

 人生初めての有人改札に驚愕し、そして新たな事実にも気づく。

「ここ、だよね?県庁所在地ってもっと、都会だと思ってたけど・・・」


確定じゃん!」


本日の学び

 JR松山駅は、現在でも有人改札口。

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