実際
ポッピイとポンピイはA病院に入院しているポポンピイを見舞った。ポポンピイが入院したのは、夜道で悪漢から性的暴行を受けたからだったが、表向きには信号無視の車に撥ねられたからということになっている。なぜならばポッピイとポンピイとポポンピイは、NHKで毎朝放送されている子供向けアニメ番組の登場キャラクターだからだ。
彼らは直方体の頭部兼胴体に角材のような四肢という姿をしている。体はゼリーのように柔らかく、ことあるごとにぷるぷると震えた。体色はポッピイが水色、ポンピイがレモン色、ポポンピイが桃色。男は青、女は赤、食事にカレーが出ると必ずおかわりをするようなデブは黄がお似合い。そんな差別意識に基づいて番組制作者が決定した配色だった。
アポなしで見舞いに訪れたポッピイとポンピイに、ポポンピイは気丈に振る舞ったことにアニメではなっているが、実際には不細工な顔を涙でさらに不細工にして加害者に対する呪詛の言葉をうんざりするくらい長々と並べ立てた。そんなポポンピイに、ポッピイとポンピイは思い遣りに満ちた慰めの言葉をかけたことになっているが、それはあくまでもアニメでの話。見舞いに行く予定が入ったせいで恋人とのデートをキャンセルしていたポッピイは仏頂面で一言も喋らず、ポンピイはスケベ心全開のにやにや笑いを浮かべて「加害者に具体的になにをされたのか」という意味の質問を執拗にポポンピイに投げかけた、というのが実際のところだった。
二人から温かい言葉をかけられ、感極まって涙したポポンピイに、ポッピイは彼女の気持ちに配慮してあえて声をかけず、ポンピイは背中をさすってやった、というのは無論でたらめで、ポポンピイは悲劇のヒロインを演じるために嘘泣きをしたに過ぎず、ポッピイが黙っていたのは意識がポポンピイではなく恋人にあったからで、ポンピイは背中をさするふりをして乳房を触ったのだった。
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