輝夜と芙蓉

 どうして僕の姉はキチガイなのだろうと思いながら浅見輝夜は今朝も高校へ向かう。マンガやアニメやゲームの主人公の姉は怖くて厳しいが優しくもあっていざという時に頼りになる上に美人なのに、輝夜の姉の芙蓉は精神疾患を患っている上に不器量なのだった。

 芙蓉は事に触れて被害妄想を抱き、その度にパニックに陥って大暴れした。芙蓉と時空間を共にした者の大半が冤罪を着せられ、中でも輝夜が最も多くの被害に遭ってきた。幼少時の彼は芙蓉を風変わりな姉だと認識していた。加害者にされる度に腹を立てたが、それが姉という人間なのだから仕方ないと諦めていた。ところが精神科医が姉に精神障害者の烙印を押して以来、仕方ないでは済ませられなくなった。どうして僕の姉はキチガイなのだろう? その謎を解き明かせれば再び姉を許容できる気がしたが、雲を掴むようだった。浅見芙蓉は抹消すべき存在だ。最近そう思うことが増えた。謎の解明を完全に諦めた訳ではないが、その方法を採択するのも悪くないと考えるようになった。

 輝夜は休み時間になる度に上級生の不破汐音を中心とする女子のグループに女子トイレに連れ込まれ暴行を受ける。姉とは違いキチガイではない上に美人なので輝夜は不破汐音に好意を抱いていたが、不破汐音は「きもい」「うざい」「死ね」と言って輝夜の体をローファーで執拗に蹴る。蹴られている間、輝夜のペニスは勃起している。蹴られながら、どうして不破先輩が僕の姉ではないのだろうと思う。毎回毎回そう思う。

 芙蓉の誕生日の夜、輝夜は姉の存在を抹消する意を決した。芙蓉は自室のドアに鍵を掛けない。輝夜は姉の自室に侵入し、眠っている彼女の心臓に包丁を突き刺して目的を遂げた。彼は苦労しながらも遺体から乳房を切り取った。姉はキチガイだったし不美人だったけど胸は大きかったなあと思いながら切り取った。輝夜は泣いていた。ペニスを勃起させてもいた。

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