早朝のおもらし
孝二は掛け布団を顎まで被って凝然としていた。隣では妻の美帆が寝息を立てている。時刻は朝の五時を回ったばかりだ。
美帆は朝が弱いわけでも寝起きが悪いわけでもないが、安眠を妨げられると烈火の如く怒る。だから孝二は、美帆よりも早く目覚めた朝は、美帆が起きるまで布団の中で大人しくしていなければならなかった。
五時十五分を回った。それに前後して、孝二は尿意に苛まれ始めた。まずいことになったぞ、と思う。美帆は六時を過ぎなければまず起きてこない。このままでは、おもらしをしてしまう。
おもらし。その言葉が持つほろ苦くも甘酸っぱい響きは、孝二を懐かしい気持ちにさせた。鼓動が早鐘を打っている。おもらしは六歳の時以来していない。久しぶりにしようかな、おもらし。
孝二は物音を立てないよう注意しながら、パジャマの下と下着を脱ぎ、俯せになった。いくばくかの躊躇いを振り切り、放尿を開始する。尿が敷き布団に染み渡っていく。その温もりを、裸の下半身が皮膚越しに感じ取る。母胎に身を置いているかのような安らぎ。性交から得られる以上の快感。願わくは、永遠にこうしていたい。
「ちょっと、なにやってんの?」
尿の残量が尽きたと同時に、尖った声がかけられた。顔を振り向けると、パジャマ姿の美帆が仁王立ちし、孝二を睨んでいた。鼻をつまんでもいた。音ではなく臭いで目が覚めたのだ、と孝二は悟った。
「眠っているところを起こされるのが嫌いって、何回言ったら分かるの。しかも、三十にもなっておもらしなんかして……。お前、ちょっと、四つん這いになれよ」
美帆の声には有無を言わせぬ迫力があった。孝二は命令に従った。美帆は腕まくりし、孝二の尻を力いっぱい叩き始めた。
尻をしたたか刺激されたので、孝二は今度は大がしたくなってきた。
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