恋心

 男子中学生のアキラは、二つ歳の離れた妹のアキに恋心を抱いていた。アキと一分一秒でも長く時間を共有したいと願い、身も心も結ばれる日が来ることを夢見ていた。血の繋がった妹に恋愛感情を持つのは異常だと認識してはいたが、アキを愛おしいと思う気持ちはいかんとも抑圧しがたかった。

 日増しに高まる恋情とは裏腹に、アキは中学生になって以降、兄と距離を置くようになった。思春期だから仕方がない。アキラはそう自らに言い聞かせたが、アキとの距離が開けば開くほど、恋心はむしろ深まっていった。

 両親が泊まりがけの旅行に出かけた日の深夜、アキラはとうとう行動に踏み切った。妹の自室に侵入し、就寝中のアキを襲ったのだ。アキは初めこそ抵抗したが、やがて兄に身を委ねた。

 事後、アキラは激しい罪悪感と後悔の念に苛まれた。近親相姦の罪を両親に告げ口されるのを恐れる気持ちもあった。自殺という選択が何度も頭を過ぎった。

 だがアキは、アキラをおびやかす行動をとるどころか、媚態を示して兄に性交を求めた。アキラは困惑を禁じ得なかったが、アキへの恋心を失ったわけではなかったため、要求は拒まなかった。罪悪感を覚えながらも妹と体を重ね、快楽を貪る夜が続いた。

 アキが二十歳の誕生日を迎えた夜、転機が訪れた。アキラとアキを呼び出した両親が、兄妹に血の繋がりがない事実を告げたのだ。アキは両親の実子だが、アキラは養子だったのだ。

 それを知ったアキは、罪悪感を覚えずに体を交えられることを喜んだが、アキラの妹への恋心は急速に冷めていった。

 その日を境に、アキラはアキに性交を求められても、断固として拒むようになった。

 一週間後、アキラは彼女を自宅に連れてきた。アキとは似ても似つかない、だが見目麗しい、年上の彼女を。

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