妹、アイス、八月

 妹に命じられてアイスを買いに行く。

 八月、快晴、昼下がり。三拍子揃っているとあって、屋外はうだるように暑い。

 コンビニに着くと、傘置き場の横で、髪の毛を金色や茶色に染めた若い男たちがうんこ座りし、しきりに笑っていた。足早に自動ドアを潜り、アイス売り場へ向かう。

 棒アイスを買うと、妹は烈火の如く怒る。溶けたアイスが手について、べたべたするから、スプーンで食べるタイプのアイスでないと嫌なのだそうだ。冷房の効いた部屋で食べるから関係ないのに、と思いつつ、同じメーカーのカップアイスばかりを選び取る。バニラ、イチゴ、チョコ、抹茶、チョコミント。以上で全種類だが、二人で食べるので、二の倍数にしておきたい。イチゴをもう一個選び、レジへ向かう。

 精算を済ませて店を出ると、若い男たちは一人残らずいなくなっていた。炭酸飲料のペットボトルが一本、置き去りにされている。容器の底に黄色い液体が二センチほど残っている。尿みたい、と思う。ゴミ箱に捨てておこう、と思ったが、青信号が点滅を始めたので、急いで横断歩道を渡った。

 帰宅し、リビングのドアを開ける。途端に冷気が体に吹きつけ、思わず身震いをしてしまう。設定温度十八度の室内で、妹は下着姿でソファに寝そべり、ファッション誌を読んでいた。

 かける言葉が見つからず、真紅のショーツが食い込んだ、白桃を連想させる臀部を凝視する。

 妹があたしに気がついた。素早く身を起こし、駆け寄ってくる。妹の乳房は小さく、ブラジャーのカップにぴったり収まっている。だから走っても揺らがない。

「ドアを閉めてよ。冷気が逃げるじゃない」

 あたしを一睨みして、その場にしゃがんで袋を漁り始める。あたしには分かる。妹はきっと、イチゴ味を選ぶ。

 だって、イチゴは血の色をしているから。

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