夢の世界で

 靴箱に入っていた手紙の指示に従い、放課後に旧校舎裏に行くと、面識のない、陰気な面差しの男子生徒が私を待っていました。

 呼び出した理由を尋ねると、彼は滔々と語り始めました。

「入学式の日に偶然、君の姿を見かけて以来、ずっと君のことが好きでした。

 けれども僕と君のクラスは別々でした。たまに廊下ですれ違うことはあっても、ただそれだけ。君に話しかける勇気など、臆病な僕にあるはずもありません。

 君と一言も言葉を交わすことなく高校生活を終えるのか? そんなのは嫌だ。そう強く思った僕は、もどかしい日々に終止符を打つべく、君を呼び出したのです。

 この際なので包み隠さずに話そうと思います。君と会話をするのは今日が初めてですが、夢の世界では君と何百回となく体を交えてきました。夢の中の君は淫乱です。自ら服を脱ぎ捨てて、大股を広げて、甘い声で僕を誘うのです。絶頂に向かうにつれて激しくなる喘ぎ声、事後の陶然たる恍惚の表情。思い出すだけで僕の分身は熱く、硬く屹立します。

 君の意思の及ばぬ領域で君を自由にする僕が悪いのは確かでしょう。ですが誘惑するのは君なのです。おあいこではありませんか。

 君は眉をひそめるかもしれませんが、僕は君が好きだからこそ、夢の中でそのように振る舞うのです」

 彼は言うだけ言うと、私の答えも聞かずに去っていきました。

 その夜、私はベッドの上で、あの男子生徒にどう返事をするべきかを考えました。ですが結論が出るよりも先に、眠りに落ちてしまいました。

 そして、あの男子生徒の夢を見ました。

 翌日の放課後、あの男子生徒を旧校舎裏に呼び出した私は、「昨夜見た夢の中であなたを殺した」と告げ、彼をふりました。

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