第30話 守り抜け!黄金少女~有能メイドヒロネの戦い~
痙攣を繰り返す門番二人を部下達が拘束する。
カラサキはその様子を無言で見つめた。
弾薬の先端部分に超小型放電機構を組み込んだ
いかに屈強であろうと、麻痺してしまえば赤子の手をひねるよりも容易く処置できる。
教団建物内には教祖の女と、ターゲットであるジュリ、排除対象であるロミオとそのメイド、残りは一般市民の信者が三人。
ジュリ以外は拘束したのち建物ごと爆破させ、始末をすることになっている。
元から廃棄された建物であるから、ガス設備が老朽化し爆発したというシナリオだ。
下層エリアの古い施設が崩壊することは、それほど珍しいことでもなく、そこに住んでいた不法占拠者が命を落とすこともまた同じこと。
邪魔者がいなくなれば、ジュリは完全にアルカディア・ケミカルのものになるのだ。
突撃準備が整った。
カラサキは無言で部下達に合図を送る。
それぞれの
3、2、1、スタート。
先ずは正面玄関。
七人が突入する。
最小限の音で扉が開く。
エントランスの照明は足元の非常灯と、祭壇に灯るロウソク型に設えられた
侵入者達の視界は、そんな僅かな照明を倍増させる暗視スコープにより、明るい。
最初のターゲットはジュリ以外の人間。
まず、抵抗しそうな人間を無力化するのだ。
ターゲットの部屋がある二階への階段を確認し、ゆっくりと進む。
手にはハンドガンタイプの中距離麻痺銃。
一人が階段上を警戒しつつ登っていく。
登りきり、左右を見渡すが人影はない。
続いて三人が階段を上がり、廊下に足を踏み入れる。
それぞれ、ムラサキ、信者達、そしてロミオの部屋に向かった。
抵抗しそうな人間から先に排除するのだ。
侵入者達はムラサキの部屋の前に立つと、その扉の隙間からファイバースコープを差し入れ、様子をうかがった。
ムラサキは寝台に横たわり寝息を立てている。
別の部屋の信者も同じく眠っている。
ムラサキと信者の部屋の前にいた侵入者達は、ドアノブの隙間に接着剤を流し込んだ。
数十秒後、接着剤が固まり、ドアノブが固定される。
ムラサキ達を隔離した侵入者達は、ロミオの部屋の前に集まった。
ロミオは確実に息の根を止める。
そう命令された侵入者達は、ファイバースコープの映像を注視する。
寝台が盛り上がり、わずかに上下している。
部屋の主は眠っているようだ。
その眠りをさらに深くするため、睡眠ガスを流し込む。
これでよほどの衝撃が無い限り、目覚めることはない。
効き目が出始める五分後、とどめを刺すべく部屋の中に押し入ったが。
「寝込みを襲うなんてえらい卑怯ですわぁ。」
「!」
女の声とともに照明が点いた。
暗視スコープを付けていた侵入者達は目を押さえるが、それが決定的なミスとなった。
寝台にロミオの代わりに寝ていた人物、ヒロネはスキを見せた侵入者に容赦ないハイキックを浴びせかけた。
まるで金属のハンマーで殴るかのような重い音を立てながら、侵入者のヘルメットに衝撃を与える。
いかに耐高衝撃のヘルメットとはいえ、重い一撃に床に崩れ落ちた。
二人は仕留めるが、三人目が体勢を立て直し、ヒロネに
「お前、ただのメイドだと思ったらボディガードか!?」
言葉と同時に引き金が引かれ、電撃音が響く。
明らかに法定の範囲を超える高圧電流が放たれ、それはヒロネに容赦なく襲いかかった。
だがヒロネはそれを諸共せず、ハイキックを残りの一人にお見舞いした。
「旦那様、こちらには三名来ました。」
『残りは?』
「一階に四人です。残りは外ですわ。おそらく、ジュリお嬢様を奪取しにくるかと思いますけど。見つからんようにしといてくださいね。」
『分かった。』
「後始末が出来次第、そちらに行きます。」
ヒロネはロミオとの通信を切ると、床に卒倒している侵入者を縛り上げた。
廊下の様子を伺い、人影が無いことを確認すると、急いで自室に戻った。
「戻りました、旦那はん。」
「おう、おつかれ。」
そこには机の前でモニタを注視するロミオと、ベッドの上で毛布に包まりながら微睡むジュリがヒロネを待っていた。
「電撃食らった時はびっくりしたけど、どうにかなったみたいで良かった。それにしても、よく出来てんなその服。」
「この
「アイツら、お前が倒した三人と連絡が取れないから焦ってやがる。んで、ジュリの部屋を目指して来るみたいだぜ。」
「何人です?」
「三人だな。残りは外から追加できた一人と一緒に爆発物の準備をしてやがる。」
「ではまずは爆発物を処理致しますね。」
「いや、爆弾はそのままセットさせろ。先に三人の方をやってこい。」
「えー。でも、仲間に構わずに爆破するかもしれませんよ?そしたら、旦那はんも危ないて。」
「ダイジョーブダイジョーブ。ほら、行って来いって。」
「うー、分かりました。でも、脱出と戦闘の準備はしといてくださいよ?」
入ってきた時と同じように、廊下に人がいない事を確認し、ヒロネは三階のジュリの部屋へと向かった。
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