大学生は会話する
琉羽部ハル
第1話 友達の境界線
大学の最寄駅からは約二十分歩かなければいけない。
毎日、初回の授業で話しかけてきて仲良くなった、同じ経済学部の枝野と一緒にその二十分を過ごす。二十分というのはとても絶妙な時間だと思う。距離がある人と過ごすには結構苦痛な時間だし、仲がいいやつと過ごすには一瞬で過ぎるものである。枝野とは知り合って1ヶ月たつ。趣味も性格も違うがそれなりに気を許せる相手になっていた。
今日も二十分を浪費する。
「なぁ道田。お前友達の定義ってなんやと思う?」
「なんやいきなりやな。そやなやっぱり一緒に居ててしんどくないやつとかちゃう」
「ちゃうちゃう。そんな抽象的な話じゃなくてさ、具体的にや」
「これしたら友達やみたいなことか?」
「それや物分かりええな。なんか恋愛のABCじゃないけどそんなんみたいなやつや」
「友情の実績解除みたいなことか」
「お前物分かり良すぎて引くわ。俺のこと好きなん」
「なんでやねん。お前きもいな。そやな、俺はそいつと2人で飯に行けるやつかな」
「あぁ。確かにな。そんな仲良くないやつと飯行っても美味しないもんな」
「なんでそんなこと聞くねん」
「やっぱ大学入るとさ、高校の時と友達の作り方変わるやん。なんか俺その距離感言うんかな、それが苦手でさ」
「確かに大学入ると謎に挨拶だけして特に遊ばん、『よっ友』ってやつできるもんな」
「そうやんな。なんかそいつらに対してどこまで踏み入っていいかわからんねんな」
「そんなん踏み入るも何も別に何も進展させんでええんちゃうん」
「え?そうなんか。なんか知り合ったからには友達ならなあかんと思ってたわ」
「そんなんいらんねん。大学生やろ。みんな友達0人からスタートやから、とりあえず声かけまくるんよ。でもだんだんと気の合う奴らとしか連まんようなるねん。けど声かけてしまったからには取り敢えず挨拶くらいはしなあかん。そういう想いから生まれるのがよっ友。だから無理に距離縮めんでええねん」
「なるほどな。俺間違えてたってことか」
「お前もしかして馴れ馴れしく行ったんか?」
「いや、そ、そんなわけないやろ。俺だってこいつは友達やっていう基準持ってて動いてんねんから」
「どんな基準なん」
「消しゴム相手に貸せるかや」
「いやそれ結構誰にでも貸せるぞ。相当な奴じゃない限り初対面の人にでも消しゴム貸してください言われたら貸すやろ」
「え?そうなんか俺結構断ってきた人生やけどな」
「なんでやねん。消しゴムにお前はどんな重きを持ってんねん」
「消しゴム貸してくれた奴全員友達やと思ってたのに、違うんかったんか」
「特殊過ぎるやろ。どんな考え方やねん」
「そうなんか。友達って難しいな。あれ?そう言えば俺らって二人で飯行ったことあったっけ?」
「ないな」
「えっ?」
「俺はお前に消しゴム貸さんで」
「嘘やろ。明日も一緒に学校行ってくれるよな」
「嘘や」
こうして二十分は浪費されていく。
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