歳末のバビロン ~彼女が悪の秘密結社の女幹部になった理由~

柔井肉球

0.プロローグ 号外

 悪の秘密結社、バベルの終焉!

 

 号外が東京の空を舞ったのは、ジングルベルの流れ始める十二月頭のことだった。


 正義のヒーロー、オメガマンと、日本の誇る陸上自衛隊、警察が連携し、バベルの前線基地であり、最高戦力でもあった上野基地の制圧に成功したのである。


 バベルが自分達の存在を世に発表してから十年、上野公園では花見すら出来ない状態が続いていたのだから、上野界隈の人々の喜びは如何ほどのものだったか、筆舌に尽くしがたい。


 もちろん、被害がなかったわけではない。

 バベルは敗北濃厚と見るや、上野基地ごと自爆したのである。


 警察にも自衛隊にも重傷者が多数出た上に、オメガマンはしばらく戦闘不能を余儀なくされることとなった。


 死者が一人も出なかったのが唯一の救いであろう。

 彼らの犠牲に敬意を表し、都内は表向き遠慮がちに、訪れる平和なクリスマスを祝おうとしていた。

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