友達

しんたく

友達



 雪の降る寒い日みたいな洒落た言葉を私は考えながら冷えた体に力を入れ、駅のホームに向かっている。

 正直言うとこんな寒い日で雪も三、四センチ積もっている状態で駅などに向かいたくない。それに別段大した理由で向かっているわけでもない、ただ友達と遊びに行く、それだけの理由さ。むしろこのまま帰ってやりたい。

 だがもう引き返せないようだ、もう何秒か歩けば駅につける。その誘惑と駅から出る人々の表情、もう駅の中は外と比べものにならないくらい温かいと証明している。

 自分も早くその感覚を得ようと急ぎ足になり、駅に入るとき滑り込むようになっていた。

 入った瞬間言葉を失った。あまりにも気持ち良すぎる。自分の赤くなった頬に神経が集まってまるで心臓のように動いている。

 その感覚を味わう為に棒立ちになり少しニヤついていた。周りはそんな自分を何とも言えない目つきで距離を置きながらすれ違っている。きっと最高の感覚を味わっている自分に配慮しているんだな……やっぱりこの国の人は優しい。そう思いたい。

 五秒くらいたつと自然に足が駅の改札口に向かった、自分はまだこの暖かさに浸りたいのに…… だけど、しょうがない約束があるからな。

 改札口が目の前に着いたところでポケットから某ペンギンが描かれているカードを取り出した。それをスッと改札機に近づけたピッと鳴ったらまたポケットに戻した。

 改札機を通過したらまたしても寒さが襲い掛かった。肩や鼻に雪がついては溶けついては溶けた。。それに合わせて駅に流れる独特な風それも当たる。

 何と寒さとは不愉快な。そう叫びたいよ。

 だけど、あと数分すればまたあの感覚に戻れる。そう考えこのまま待つことにした。

 丁度自動販売機が影になっているベンチを見つけそこに座ることにした。

 ゆっくり座り込み、やることもなくぼーと自分の吐く息を見つめている。

 すると改札機のほうから

 「おう、健太待たせたな」

 と慣れ親しんだ声が聞こえた。

 座り込んでタイミング悪く現れた俺の

      ――友達―― 

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