完璧王女とダメダメ騎士

空津 終

第1話

「ん…」

気がつくと俺は一本の太い木に寄っかかっていた。右を見ると10メートルほどの綺麗な壁があり、鼠返しもあるため、よじ登るのは到底不可能だろう。

朝日が眩しく、思わず手を太陽にかざしてしまう。

「ここは…」

取り敢えず状況確認をしようと呟いた時、

パチン!と何かを叩く音が響いた。

「王宮の庭です」

そして、俺の耳に混乱している俺の耳に綺麗な、透き通った声が入ってくる。

「…誰?」

豪華なドレスを身に纏い、THE・お嬢様!という感じであった。

「この国の第三王女です。貴方こそ何者です?見たところ騎士というわけでも無さそうですし…」

「…へ?おうじょ?」

「…王女」

「あの我儘で金銭感覚狂ってて横暴で口だけは偉そうな女性のこと?」

「貴方、全王女に土下座しなさいな」

「わぁー!!!!パワハラだー!やっぱり王女だー!!」

「…話を進めたいのですが?」

アイアンクローをされ、目の前が見えなくなったが、彼女が怒っているであろうことは分かった。

「王宮に侵入した後にうたた寝とは。

いい度胸してますね。

ここをお昼寝施設だと間違えて入ったのですか?」

「い、いや!!違う!!え、えーと!そう!

俺は記憶喪失なんだ!!助けてくれ!!」

なんか濡れ衣を着せられる気がしたので慌てて本当のことを言って弁明しようとする。

「…はぁ。貴方が記憶喪失だろうがなんだろうが構いませんが、早く出ていくか、騎士団に通報されるか。どちらがお好みでして?」

「出ます!!出方を教えてください!!」

「…そうですか。ならば教えましょう」

咳を吐くと、彼女は続けた。

「まず目を瞑ってください」

「途中の道は知られてないように、というヤツですな」

こういう記憶は謎に残っていた。

「脱力してください」

「…?はぁ」

肩の力を抜き、手をぶらぶらさせる。

「では…。すぅーはぁー」

深呼吸の音が聞こえると、彼女は俺の胸に手を当てた。

「どぉりやあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

「へ?あの、ちょ、ま、ふうええああああああああああああ!!!!!」

簡単に言おう。胸ぐらを掴まれ投げ飛ばされたのである。

「受け身はしっかりとってね!王宮前で死人が出るなんて嫌だから!!       」

身体が宙に浮き、壁を越えた後は自由落下をした。

「…ってて。やっぱりアイツ王女だわ…」

無事?着地をし、尻を打ったものの怪我はなかった。そして空を見上げると、

「おっと。これが空から落ちてくる系ヒロインというヤツかな?」

イケメンが俺の顔を覗いていた。







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