百合じゃない、百合
藤之恵多
オンナの世界について
男女平等といわれる世の中になって久しい。
「男らしく」とか「女らしく」といった形容詞も、セクハラにあたる可能性があるというのだから、スゴイ世の中だ。
男女平等、結構なことじゃないか。
平等、公平というものは、なりにくいから声高に言われるのだ。
わたしが今日言いたいことは、男女平等とはむしろ、真逆。
“オンナ”には、女にしかわからない世界がある。これは、男女平等になろうと、代わりはしない。
男性にも、もちろん、そういう世界があるだろう。
そう思うのだが、これを書いている人間は女である。オトコにしか、わからない世界をいくら書いても意味はない。想像でしかないからだ。
そう思うので、今回は、女性に限った話をしようと思う。
“オンナ”は面白い。
それが、長年、オンナを見続けてきたわたしの感想だ。
○理解不能なオンナの世界
生まれてから、女性として生活してきた。
しかし「オンナ」として、立派にやってきたかと言われると……。
疑問符しか出てこない。
昔から「オンナ」というものは、まったく理解できないものだった。
え、女性のくせに、オンナがわからない?
不思議に思うでしょ。でもね、オンナって、複雑怪奇すぎて、大半のオンナは理解してない。
ここらへん、男の人には分かりにくいのかもしれない。
女性にとって、自分が経験してきたものが全てだ。そのまま「オンナ」の価値観になる。それは、全く違う「オンナ」を見てきた人の場合、役に立たない。
同じ女性であっても、わからない時は、まったくわからない。
推察はできても、結論は出ない。
そういう風に「オンナ」は形作られている気さえする。
オンナの世界は、とにかく、面倒くさい。
ちょっとしたことで、泣く。
ちょっとしたことで、集団で揉める。
理論は必要ない。感情さえあればいいのだ。
そんな世界を、どうやって生き抜いていくのか。
簡単な話だ――経験則と諦めである。
オンナの世界は、理不尽が横行する。
いつの間にか、自分だけ悪役になっていたり、話が倍どころじゃなく、盛られていたり。
そんなことくらい、よくある話だ。
理論がないから、変な部分も気になりはしない。特に集団になってしまえば、空気を読む。みんなが変だと思っても、空気が変わらなければ、誰もそれを口にしない。
オンナという生物は、小さいときから、そういう世界で生きてきたのである。
こんな世界で生きてきた生き物と、また別の世界で生きてきた「オトコ」。
そこに平等や公平はあっても、完全なる理解など、最初から無理な話だ。
感情の争いになることが多いので、スッキリする解決はほぼない。だから、諦める。
経験で学んだことにより、自分の被害を免れるだけで精一杯だ。
そうやって女性は成長し、オンナとして生き抜く術を手に入れる。
さて、ひとつ、考えて欲しい。
オンナの世界を生きていくのに、必要なもの。それは、経験と諦めと書いた。
この2つを実行するのに、一番必要なのはなんだろうか。
女性だったら、ピンとくるかもしれない。男性も似たようなものだったら、面白いので、ぜひ教えて欲しい。
経験と諦め。
これを体験するのに、いちばん必要なのは『集団』である。
オンナといえば、『集団』のイメージを持たれがちだ。とにかく、群れたがると思っている人も多いだろう。
それは当たりである。
オンナというものは、集団で育ち、経験を積む。
その結果、成長してからも、集団で行動することを好むのだ。誰でも未知の世界よりは、既知の世界で生活したほうが楽だ。
オンナは面倒だと思いながら、経験で得た生きる術を使い、集団で生活するのだ。
反論は、たくさんあると思う。
女性でも、集団行動が苦手な人はいる。
集団で嫌な思いをしたから、ひとりで行動することが好きな人もいる。
わたしも、どちらかといえば、単独でサクサク行動したいタイプなので、その意見は十分わかる。
それでも、女性の私から見ても。
『オンナの世界』と言われれば、単独より、集団になる。
集団で、わちゃわちゃ揉めているのを見ると「女の子だなぁ」と感じるくらいだ。
少し、視点を変えてみよう。
生物学的な観点からも、女性はコミュニケーション能力が高いとされる。脳みその構造がコミュニケーションに向いているらしい。
この違いは、女性が生活する上で、集団で行動することが多かったからできた。
出産にしても、育児にしても、女性がひとりで行うのは難しい。そのうえ、避けることも、ほぼ不可能だ。
絶対、集団を頼らないといけない立場にあって、女性は、集団で行動できる能力を向上させてきた。
そのため、現在を生きる我々も、集団で行動する能力が高くなっている。
女性として生きるためには、集団行動が必要だった。
今の時代、集団が苦手になっている人間も多いなか、そう考えると、面白い。
つまり、女性が群れたがるのには、2つ理由がある。
ひとつは、小さい頃から、集団で行動することが多い。それにより、コミュニケーションの経験も多くなる。結果、成長しても、集団で行動することに慣れていること。
もうひとつは、生物として集団で行動しなければならなかった。そのため、集団で行動することに適した進化をしたこと。
どちらにしても、女性は集団で行動するのを、自然に感じるようになっているのだろう。
女性は、集団の中で、人生経験を積む。それにより、集団での生き方を心得る。
逆に言えば、集団での生き方ができない人には、強く当たりがちな気がする。
「集団でうまく生きるって、難しいんだって!」
と、単独を好む人間としては、言い訳をさせてもらいたい。
自然にできる人にはわからない『オンナの世界』は確かに存在するのだ。
わたしはオンナの世界で、たくさん失敗を繰り返した。その分、オンナの世界というものを意識することが多い。
難なくオンナの世界を生きてこれた女子よりは、オンナの世界を理解している……はず。
言い切れないのかって?
それで理解できるなら、いまだにオンナの観察など続けてない。
見れば見るほど、理解不能。
知れば知るほど、興味深い。
それが、『オンナの世界』。
百合の下地になる、世界として、これほど面白いことはないだろう。
○オンナと恋愛
「オンナは生まれながらの女優よ」――そんな名ゼリフがあったりする。
「オンナは生まれながら、オンナ」――そんなことも言われたりする。
わたしは、このどっちにも賛成する。
オンナは生まれながらオンナだし、オンナの世界で生きる限り、女優にもなる。
じゃなきゃ生きていけない。オンナの世界は弱肉強食だ。
オンナというものは、難しい生き物だ。
それは男女ともに、変わらない感想だと思う。
オンナには不文律が多い。集団心理もよく働く。
そういう相互の絆が生まれにくい環境で、女性同士の絆が生まれる。わたしはこれを百合と言いたい。こう考えると、百合が奇跡の産物に思えるから不思議だ。
オンナの世界はとかく生きづらい。
少なくとも、わたしは生きるのに、多大な努力を要する。
だからこそ、そのオンナの世界を、ゆうゆうと遊び回るオンナという存在。そんな存在が、非常に興味深く思える。
オンナは集団で育つ。そう上で書いた。
集団に所属するということは、集団の中でコミュニケーションをとる必要がある。
「当たり前じゃないか」と思うなかれ。
集団でコミュニケーションをとるのは、難しい。
学校だったら、まだ、どうにでもなる。
同年代だし、同じ授業を受けている。先生やイベントなど、話すことに事欠かない。
これが社会人になると、話は全然違う。
年齢も親子ほど離れる人もいるし、出身もまったく違う場所なこともある。
生活環境や学歴も、とてもひと括りにはできないだろう。
集団は、集団でも、その中身はバラバラになる。
ぶっちゃけ、集団を作らない方が、うまく行動できるのではないかと思うほどだ。
だが、オンナは、その中でさえ、集団を作りたがる。たぶん、今までそうやって生きてきたからだ。自然とそうするように、インプットされているのである。
こういう時、間違いなく、話の種になるものがある。
それは「恋愛」だ。
女性は恋バナが大好きな生き物だ。
恋を嫌う人はいないし、話を聞くのを嫌がる人もいない。(長過ぎたり、つまらないのは、ダメだが)
不思議なことに、オンナは、その人がどういう恋愛観を持っているかで、人を判断する部分がある。
まぁ、理解はできる。
恋バナというか、恋愛というものは、人が出る。どういう価値観なのか、分かりやすい。
どこからが付き合っている認識なのか。浮気されたら、どう行動するのか。修羅場の経験は……などなど。
女性が聞きたがる恋バナの種類は、千差万別である。
目新しさは、あまり重要ではない。
むしろ、聞いたことがあるような話の方が受ける。
女性は、物語のような恋バナより、自分が共感できる恋バナを求めている気がする。
お互いに共通の認識があることがわかると、安心して、集団に受け入れるのだ。
これは、ある意味、利口な話ではないだろうか。
先ほど言ったように、社会に出れば、集団の中身はバラバラになる。
バラバラの人間の中で、一番共通した価値観が恋愛なのだ。
恋愛ほど、浸透している文化は他にない。価値観として、もっともパロメーターに適しているとかもしれない。
仕事の能力は置いておく。
バラバラの集団が共通点を見つけやすいのが、恋バナなのである。
わたしは、それを肌で感じたことがある。
学生も、大学になると、人のタイプはバラけてくる。サークル活動では、学部や年齢も違う人が集まるものだ。その新人歓迎会において、切り出されるのが、必ず恋バナ。
一度、その習慣に辟易していた私が
「恋バナ以外に、話ないのー」
と、言ってしまったときがある。オンナの世界では、禁句に近いが、恋バナ苦手なもんで。
そのとき、印象に残っている一言がこれだ。
「だって、恋バナ以外、話せることないんだもん!」
これである。
そう、その集団は、恋バナ以外、共通点がなかった。
そんな中でも、コミュニケーションをとろうと思ったオンナが、恋バナを語り始めたのである。
私の一言は完全に余計だったわけだ。「たしかになぁ」と納得せざるを得なかった。
オンナは恋バナが大好きだ。
その下に隠れているのは、コミュニケーションをとる、ということなのかもしれない。
そう考えると、恋バナに対しての意識が少し変わる。
恋バナを苦手に思っている人は、ぜひ、一度試してもらいたい。
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