接球杯 結果発表&寸評
はい偽教授接球杯、結果発表のお時間でございます。宣言通りグランプリとは違う受賞作を一つ決めるわけですが……これは、「作品の巧拙」や、「面白さ」や、「テーマの消化具合」などで決めるわけではありません(半分自分で書いてるものについてそんなものは決められないし)。なのでこういう名前にします。
では発表します。偽教授接球杯、栄えある『ナイスキャッチ賞』!こちらの作品です!
君の夢に灯したら
https://kakuyomu.jp/works/16816700429614997959
おくとりょう様との共作です!
何がナイスキャッチかって、以心伝心でキャッチボールができたという観点からはこの作品が一番だった、ということです。内容についてはまたあとで触れます。
では、ここから先は「コメンタリー」です。普段は寸評と言ってますが、今回は「コメンタリー」です。
尾八原ジュージ様『PC01』
https://kakuyomu.jp/works/16816700429615681478
いやー……これ本当に大変だった。正直なところ、どんな変化球を投げられるより、160キロのストレートをミットに投げ込まれる方が後が大変なんですよね、この企画。例えばカーブに対してはスライダーでもシンカーでも対応できるけど、ストレートにはストレートで返すしかないだろう?基本。で、この作品はジュージさんお得意のホラーで直球投げ返してこられた感じなわけなんだけど、きょうじゅにはホラーの持ち球がほとんどないわけで、自分が書いた中ではほぼ唯一人様からお褒めいただけた感じの作品である『彼の名はエディ』の設定を引っ張ってくることでかろうじてホラーの面目を保って、どうにか結末まで持ち込みました。いわゆる「信頼できない語り手」もので、結局ほんとうの事実はどういうものだったのか分からないまま、というのも、ホラーらしさを演出するためのきょうじゅのいっぱいいっぱいでございます。がんばったよ。
水野酒魚。様『美食家』
https://kakuyomu.jp/works/16816700429618753903
四話のオチがクトゥルフものっぽかったので、「ぜんぶナイアルラトテップのしわざだった」という落ちで終わらせようかとも思ったのですが、それだとありきたりな感じがするかなとも思ったので、ニャル様にも食料になってもらって、投げっぱなしで落としました。いったい、何なんでしょうね、この空間。ほんとに。気に入っているという意味ではかなり気に入ってる作品。
おくとりょう様『君の夢に灯したら』
https://kakuyomu.jp/works/16816700429614997959
記念すべき本企画最初の完結作品。一見するとすごい変化球のようにも見える作品ですが、伏線の張り方などの点において「どこでミットを構えて待っているかがかなり見えている」ので、非常に対応しやすかったです。まさに「小説のキャッチボールをやった」という感があって、第一号作品に相応しかった。内容的にも、ちゃんと短編小説として綺麗な落ちがついていて、美しかったと思います。というか、先生、頑張ったね。頑張りましたね。あなたはえらい。
狂フラフープ様『鬼が出るか蛇が出るか』
https://kakuyomu.jp/works/16816700429632008173
3話から登場するヴァンピールという概念なんですが、元になっているのはロシア語のDhampirという単語なので、ダンピールと書いた方が正しいと言えば正しいです。ただ、この小説に出てくるヴァンピールはDhampirではなくVampileであるのかもしれないし、そのへんはどうとでも誤魔化せる部分ではあるんですが、はい。で、竜ですね。名前も出てこないけど、事実上の主役。3話書いた時点で、「実はこの竜こそが真祖である」という可能性は頭の片隅にはあったと思う。でもどっちかといえばこの竜は吸血鬼に囚われて血を抜かれてるかわいそうなやつで……みたいなイメージの方が先に立ってはいたけど。で、4話を受けて、5話目を書くときに、真祖は出そうと思ったんだけど、考えたのが3通り。「語り手が実は真祖」「部下の中に素性を隠した真祖が紛れ込んでいる」「竜が実は真祖」の三つ。最初のやつは、そもそも信頼できない語り手が得意手法じゃないので避けました。二つ目は、5話目になってぽっと出のキャラに出てこられるのが微妙だから避けました。で、竜は真祖だった、ということになった。あとはそのアイデアをもとに肉付けしていったわけだけど、いや、設定と主人公の思索の演繹に文字数がかかるかかる。5000文字めいっぱい(主催の私には5000字以内で書かなければならない縛りは無いのだが、まあ一応ね)必要であった。きょうじゅ頑張りました。
藤田桜様『ユキと亡霊のバフラム』
https://kakuyomu.jp/works/16816700429637886489
完結三本目。主催が初めて「五話目」を書いた作品。なんでこれを最初にやったかというと、マヤ文明に関する資料の本を借りてて返さなきゃいけなかったから先にやりました。あと、思いついたから、というのも大きい。けっこうスタンダードなファンタジーで、ガール・ミーツ・ボーイなんだけど、バフラムの生死を最終的にどう処理するかはちょっと迷いどころだった。初期のアイデアだと、イシュタムが出てくるところまでは同じだったんだけど、イシュタムが楽園へと導いてさようならして終わり、にしようかとも思った。でもまあ、こういう企画であることだし、コテコテのハッピーエンドで落とすのがいいかと思いまして。で、こうなったという次第です。
白木錘角様『クワズチノアメ』
https://kakuyomu.jp/works/16816927859078438147
この作品はこのコメンタリーを発表した時点でまだ最終話が発表されてませんが、後日発表されるそうですので、未来に読まれる読者の方のために一覧に残してあります。
辰井圭斗様『ライラー』
https://kakuyomu.jp/works/16816927859086416862
珍しく館や料理が話の主題にほとんど絡まない作品。まあ、たまにはこういうのがあってもいいですね。どうでもいい話をしますと、勇者カイト、魔王グランドノア、魔将スズネ、そしてシーリアというのは拙作『トコウヤ旅行社の異世界ツアーへようこそ』から引っ張った名前です。名前と肩書以外はまったく別人で、スターシステムですが。さて、この作品の肝は良くも悪くもこの落ちでしょう。なんていうか、まあ、うーん。あれだ。もうちょっと素直に欲望というものに身を浸してもいいんじゃないかな?人間ならさ。
292ki様『迷ヒ仔』
https://kakuyomu.jp/works/16816452221427542025
完結二本目。今回、一話目が一話目だから最初の料理をどうするかっていうのが最初の大きな分岐になっているわけなんだけど、この話では「食べない」、それも「何だか分からないが徹底的に食べてはならないらしい」というのが主軸のようだったので、それを「食欲の禁」と解して、「睡眠欲の禁」、「性欲の禁」と続けた。いわゆる三大欲求ですね。で、そこからさらに話が展開されて、クトゥルフ系の雰囲気のあるホラーらしいホラーとして綺麗にまとまっています。キャッチボールがうまくいった感じですね。
ハクセキレイ様『未定』
https://kakuyomu.jp/works/16816927859098766957
最初老人の名、アンブローズ・ビアスにしようと思ったんですけど、ハクセキレイ氏のそれ方面の知識がどの程度であるか分からないし、そのへんはお任せすることにしました。こういう「投げっぱなし」をやってももう一人がキャッチして話を続けてくれる、というのがキャッチボール小説のよいところですね。あと思うのが、やっぱりクトゥルー神話というモチーフの汎用性の高さ。まったく架空の神性を出すよりは読者の理解を得られやすく、「共通の認識のフォーマット」として機能してくれることの心強さ。「吸血鬼」なんかに近いのかもしれないな、モチーフとしての力のありようは。
小辰様『人喰い鬼の宴』
https://kakuyomu.jp/works/16816927859345381654
なぞなぞ、がテーマの接球となりました本作品。3話で「古英語」をぶん投げたら小辰氏に途方に暮れられたので、翻訳文と謎の答えだけは提示するなどの内幕がありました。作中にも書いた通り、あの文章は私が考えたものではなくエクセターの書という実在の中世のなぞなぞ本に出てくる本当にある謎です。まあ、これの3話を書く段階になって調べて探し出したというだけで、元から知っていたわけではないのだけど。で、作品自体ですが、ほかの作品も全部そうなんだけど、みごとに「きょうじゅには一人称話者が恐怖させられる種類のホラーは書けない」というパターンになってますね。書けないんですよ実際。胆力と知恵で問題に挑む、みたいな精神性になってしまうので。というような感じでした。
宮古遠様『鬼が出るか、仏が出るか』
https://kakuyomu.jp/works/16816927859686083489
これについてはしょうじき最後の球、キャッチし損ねている感がある。無理に千字にせずにぶっつり巻いて終わらせたほうがましだったかもしれん……。なお、ゴーストとダークネスは、元ネタ自体は実在した人喰いライオンの名前です。それを元にしたキャラクターが私の小説『トコウヤ旅行社の異世界ツアーへようこそ』に出てくるので、直接の元ネタはそちらですが。で、銃そのもののイメージモチーフは、ヘルシングのアーカードの銃。
佐倉島こみかん様『ハンスとグレーテ、もしくは準備の良い森の城』
https://kakuyomu.jp/works/16816927859724691962
明白に『注文の多い料理店』を下敷きに置いた、素直な返球が来たので、つい悪戯心で変化球を投げました。はい。じつのところ「変な味のする料理」で念頭に置いていたのは「地球外の知性体が、形ばかり人間のすることを真似したばっかりにおかしな結果になっている」というアレだったのですが、まあ思った通りにはならんのがキャッチボール小説の醍醐味よな。
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