宮古遠様 Story-3
俺は両手に二挺の銃を構える。『ゴースト』と『ダークネス』。どちらもオーダーメイドの一点ものだ。ゴーストの方が小ぶりであり、ダークネスは拳銃としてはかなり大振りな、特殊な武器である。生身の人間を撃つだけならゴーストで十分だが、おれの稼業ではそうとばかりもいかない場合もあるので。
おれの眼が、暗闇の中で敵の姿を捉える。こいつはさっき、手も何も触れることなく物体を“喰らった”。そういう能力を使う種族には心当たりがある。
ホムンクルスだ。
それはおそらく間違いない。問題は、何をベースとして作られたホムンクルスであるか、だ。
ホムンクルスには大きくわけて三つのタイプがある。まずは、女の赤子の胎を媒介として創り出される小人としてのホムンクルス。第二に、フラスコの中で創り出される人造人間としてのホムンクルス。そして第三は、既存の生物を変化させることで怪物化させたホムンクルスである。
さて、匣から飛び出してきたものの正体だが。猫の形をしていた。しかし大きさは明らかに違う。大きさを言えばほぼ虎だ。だが、こいつは猫だ。猫から造り出されたホムンクルスだろう。事前に得た情報では、老人は猫を飼っていた、とのことだった。その猫であると考えられる。
ホムンクルスには様々なものがある。狂暴で、怪物としか言いようのない奴もいれば、人間に友好的な知能の高いホムンクルスもいる。
で、この猫はというと、猛獣のような凶暴さはなさそうだった。しかし、おそらく近づいただけでさきほどの料理のようにおれの身体を腐らせるだろう。それが、匣から飛び出したそのままの姿勢で、低く地に伏せている。こちらを睨んでいる。
「おもてなしは気に入っていただけたかな?」
匣から声がした。大きな匣だとは思ったが、もう一人中にいたらしい。例の、ターゲットの老人だろう。
「あいにくだな。まったく手をつけないうちに全部腐ってしまったようだからな。雨風を凌げていることだけは感謝しないでもないが」
俺は警戒する。言い草と、今出てきた顔からして、ターゲットの老人その人で間違いない。だが、こいつは何故腐っていない?
「そうかそうか。それで、わたしを殺しに来たのかね。誰の依頼だ。やはり息子か」
「そこまで分かっていて、おれをあえて招き入れたのか」
「そうだよ。だってわたしは、逃げる必要も隠れる必要もないからね」
そうだろうな。
「わたしはそう、こんな素晴らしい力を手に入れたのだから」
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