第15話

 

「んん……」


 俺は後頭部に柔らかい感触を感じた。


 ――――メさん、ハジメさん


 女の人の声が聞こえる。うーん、柔らかくて気持ちいい……


――――ハジメさん、聞こえますか?


 俺は何故か無意識に自分手を上に伸ばした。



 ふにふに



 んん? なんだかこちらも柔らかいものが?



 ふにふにふに



「ひゃっ!」



 え?



 俺は色っぽい声に慌てて目を開けた。


「うう……」


 目の前では、ドルガさんが顔を赤らめてぷるぷると震えていた。そして続けて右手に目をやると。


「す、すみません!」


 何と、ドルガさんのふくよかな胸を揉んでいた。俺は慌ててドルガさんの膝から転げ落ちる。


「ハジメさん……」


「本当にすみませんでしたぁ!」


 俺はそのまま勢いよく土下座を敢行した。デコが擦り切れる勢いでだ。


「あの、ハジメさん、落ち着いて」


「ど、どうかお許しを! こ、この腕でよかったら、好きに!」


 俺は右腕を突き出す。


「ハジメさん」


「ううっ! どんな痛いことでも、我慢しますから!」


「ハジメさん、落ち着いて下さい」


 俺の頬に何かが触れた。


「へっ?」


 俺が恐る恐る顔を上げると、ドルガさんが俺の左頬に右手を添えていた。


「ハジメさん、大丈夫ですよ。私は気にしませんから。でも、そんなに謝られると逆に傷つきます」


  ドルガさんは困ったような顔をして微笑みかけてきた。


「これで許してあげます」


 ドルガさんはそう言うと、人差し指で俺の頬をグリグリと軽くついてきた。


「ふふっ、お久しぶりですね?」


 ドルガさんは相も変わらず美しい顔だ。俺は思わず顔が熱くなる。


「ハジメさんは生まれ変わっても私の心をくすぐるわ。ああ、キスしたい、でも、余りするのも……」


 ドルガさんは目をギラギラさせながら俺の顔を覗き込む。うっ、何故か目を話すことができない。


「す、少しくらいなら……えいっ!」

「むぐっ!」


 俺はドルガさんにいつかされたように再び熱いキスをされた。


「ふうっ、やはりいいわ、ハジメさん。いえ、今はヴァンさんでしたね」


 濃厚なキスを終えたドルガさんはペロリと唇の周りを舌で拭った。


「あの、俺にも心の準備というものが……」


 俺は股間を押さえながら控えめに抗議する。


「嫌だったかしら? 神気に当てられる事はないから、前よりはマシだと思ったのだけれど」


「そ、そうじゃなくて、その、男の本能がですね」


「ああ! 勃ったのね?」


 ドルガさんは恥ずかしげもなく男の矜持を踏みにじりに来た。そんな顔して俺の気持ちを弄ぶのはやめてくれっ!


「何だか私も下の方がウズウズしてきたわ……ヴァンさんは私の身体ととことん相性がいいみたい。ねえ、この前の続き、してみない?」


 ドルガさんはその薄い布を捲りながら、俺に迫ってきた。


「つ、続き、ですか?」


「そう、続き。私もう、熱くなってしまっているわ。ほら、こんなに……」


 ドルガさんは自らの股に手をかけ、濡れた指先を俺に見せつけてきた。


「ご、ごくっ」


 俺のあそこが更に大きくなった。こんなの見せられて興奮しないわけがない。


「ど、ドルガさん? 本気なのですか?」


「本気よ」


「あの、俺なんかで?」


「ヴァンさんだからこそ」


「……は、初めてですが、よろしくお願いします」


 俺は場の雰囲気やら自らの欲やらに流されて、続きをすることを了承してしまった。


「うふふ、では、早速……」


 ドルガさんは布を全て脱ぎ、その裸体を露わにした。


 布の上からでも透けて見えてはいたが、いざこう生で見るとまた凄いものがある。白くきめ細やかな肌に加え上から下まで完璧なプロポーションだ。俺は益々興奮してしまう。


「どうかしら?」


「凄く……美しいです」


「ふふ、良かったわ。これで駄目だと言われたら、本当に傷ついていたもの」


「そんな、こんな素晴らしい身体を見て酷いこと言う奴は、俺がぶちのめしてやりますよ!」


「あら、頼もしいのね?」


「あっ……」


 俺は勢いで恥ずかしいことを言ってしまったことに気がつき、慌てて誤魔化そうとするが帰ってぎこちない動作になってしまった。


「そんなに恥ずかしがる事はないでしょう? ほら、ヴァンさんも」


「は、はい」


 俺は促されるがままにズボンやら何やらを脱ぐ。そう言えば俺は叩き潰されたはずだが、何故この空間にいるのだろうか? まあ、今は細かい事はいいか。


「まあ、こんなに」


 ドルガさんは目を見開き両頬を手で押さえくねくねと身体をしならせる。一つ一つの動作がエロくてどうしようもないな。


「じゃ、じゃあ、その」


「はい、よろしくお願いしますね?」


 と微笑む女神様の姿は、数分後には全く違う様子を見せるのであった。










 そんなやり取りを幾らか行った後、遂に最後まで致してしまった俺達は、少し休憩を取っていた。何故か神殿の真ん中に豪勢なベッドが現れ、そこで行っていたのだが、ドルガさんは今俺の左横でぐたりと寝そべっている。何回やったかわからない程だったので、神様といえども疲れてしまったのだろう。


 因みにこの世界は神界と呼ばれる世界で、ここは神界のドルガ域と呼ばれているらしい。域の大きさはまちまちだが、基本は文明の発展度にあわされているとのことだ。地球よりも劣っているであろうドルガより、グチワロスの部屋の方が極端に小さいのは何故だったのだろうか? そこは少し疑問である。


「ドルガさん、大丈夫ですか?」


「凄いわ……凄いわ……ああ、私の中にヴァンさんを感じます」


 ドルガさんは自らのお腹を俺に見せつあるように摩る。


「なっ!」


「ふふっ、男の子かしら、女の子かしら?」


「か、神様でも出来るんですか?」


「望めばね。まあ、さすがに今回は冗談よ」


 よ、良かった。これで人間と神のハーフができて、某ゲームのように諸共追放されるとかいうパターンにならなくて済んだ。責任の取りようがない。


「でも、ヴァンが良いと言うのなら、私はいつでも子供を産むわよ?」


「や、やめて下さいよ。俺にはベルがいるのですから……」


「ドルガで人生を全うした後で良いのよ? 神の寿命は永遠に近いの。だから、ヴァンが望めば私と同じような存在にもなれるわ」


 ドルガさんは致している間にいつも何か俺のことを呼び捨てするようになっていた。俺は最後の砦と言わんばかりにさん付けをやめなかったが。


「あの、今更ですが、俺もう既に死んだんじゃ……」


「あら、一度だけ生き返るのでしょ? グチワロスからはそのように聞いているのだけれど」



 ……あ。



「そ、そうでした……という事は、今すぐベルの元に戻って!」


 なんで馬鹿なんだ、俺は。この事実に気付いていれば、さっさとベルの元に戻って助けに入ったものを!


「ヴァン、落ち着いて」


「だって、ベルが!」


「ベルさんは大丈夫だわ。ハイオーガは倒されました」


「た、倒されましたって……ベルはそんな力なんて」


「持っています。と言いますか、覚醒しました」


「……覚醒?」


「潜在的な能力が発現することです。転生者は何かしらの覚醒現象を引き起こします。ベルさんの場合は、魔法の腕が飛躍的に伸びる、また一撃必殺の技を習得する覚醒みたいですね。一度に二つだなんて、凄いです」


 ベルが、覚醒を……一撃必殺。そいつで倒したのか?


「だから、落ち着いて下さいね?」


「は、はい、すみません」


「うんうん、素直な人は好きよ?」


 ドルガさんはまた色っぽい笑顔で俺のことを見る。


「ううっ」


 ドルガさんの笑顔にはどうも滅法弱い。


「じゃあ、これからどうします?」


「あの、それでも早く帰りたいです」


 大丈夫だと言っても心配なものは心配だ。さっきまでまぐわっていた奴が何言ってんだと思われるかもしれないが……


「その前に、ヴァンさんも覚醒しておきましょう?」


「へ?」


 ドルガさんはそう言うと、俺に向かって両手を突き出す。


 そして俺は光に包まれた。

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