第27話 遅刻
「いててっ!ナギごめんっ!いててっ。」
「辻修斗のバカバカバカッ!!」
怒ってポカポカと叩いているがナギの小さな拳はたいしてきいていない。
「緊張は…?…」
「してないっ!」
「良かった。」
少し前までガチガチに緊張していたが、二人だけの打ち合わせをいっぱいしたおかげでいつも通りのナギに戻っている。
これならゲーム開始の挨拶も司会進行も余裕でこなせるだろう。
だが、打ち合わせが長引いたせいで現在、クラウンゲームに遅刻している最中だ。
「全然良くないっ!…た、立てなくなるまでするなんて酷い。」
お姫様抱っこでゲーム会場に運ばれているナギは耳を赤く染めて俺の胸にしがみつく。
「ごめん。ナギが可愛…じゃなくて好きすぎて止まんなかった。」
「……………っ…………辻修斗のバカぁーーー!!」
誰もいない廊下に急ぐ足音とナギの声が響き渡った。
*************************************
全力疾走の甲斐あってクラウンゲームには15分の遅刻ですんだ。
「ごめんなさい。遅くなりました。」
二人で謝りながらゲームの関係者入口から入ると、ナギを待ち構えていた生徒会役員達に一斉に睨まれた。
「遅いよ!王様!!早く朝礼台に上がって!!」
ナギに肩を貸して朝礼台の下まで一緒に行くと、今度はまたゲーム参加者の2年生達の視線がこっちに集中する。
あまりにも冷たい視線に「遅れてすみません」とまた謝った。
去年のクラウンゲームのメダル認証方式が学校側にも生徒にもが好評だったため、今までの力ずくで奪い取る形ではなく、今年からメダル認証方式が正式採用になった。
朝礼台の上には、二人で作った金色の王冠がすでにセッティングされており、照明を浴びてキラキラと光を放っている。
バーコードもドローン操縦も生徒会役員がスタンバイ済みで、前年度の王様ナギが挨拶とスタートの号令を出すだけになっていた。
ふらつく足取りでナギはゆっくりと朝礼台に上り、机の上にある低いスタンドに乗っているマイクに手にとった。
「2年生の皆さん、遅くなって申し訳ありません。暗くなってきていますので今すぐゲームを始めたいと思います。」
ナギは待たされてイライラしているみんなの気持ちを察して挨拶を省いた。
すぐに始まると分かった2年生達から嬉しそうな歓声と拍手が上がる。
「それではルール説明です。ドローンからメダルが落とされます。メダルは参加者の人数分だけしかありません。」
ナギは朝礼台下にある色々な機材とパソコンがのったテーブルを指し示す。
「こちらの受付でクラスと名前を言ってメダルをチェックして下さい。メダルは一人1枚となっています。2枚持ってきた方は失格です。準備は良いですか?それではクラウンゲームのスタートです。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます