第5話 策略
俺達のベルジャンワッフル屋に並んでいる列は途切れず、恐ろしい勢いで飛ぶように売れまくっている。
男三人で店を切り盛りしているけど、目の回るほどの忙しさで猫の手も借りたい……っていうか店番これじゃ、少なすぎるよっ!!
部活しているクラスメイトは、クラブ活動の所の分の店番があるから 一時間で交代、でも俺達三人は帰宅部だから二時間店番をやらなくちゃいけない。
俺は会計係兼、ワッフルを提供しているから、キッチンとの往復で座ることさえ出来ない。
それは後ろにいる鈴木と佐藤の二人も同様で、立ちっぱなしでワッフルの上に生クリームとフルーツソースをトッピングしまくっている。
三人とも足が痛くて限界を超えていた。
時計を見ると交代時間は四十分も過ぎている………なんで交代要員が一人も来ないんだよ!!
修斗のバスケ部はもう終わっているはず、ここで待ち合わせて一緒にご飯を食べようと約束していたのに。
この分じゃ、お昼は修斗一人で行ってもらうしかない。
修斗はバスケ部の出し物と クラスの出し物の両方だから忙しい合間をぬって来てくれるのに。
修斗と出店巡って、おしゃべりしながら楽しく買い食いしたかったな……
「あれ?岩崎君、休憩しないの?」
カウンター越しに声をかけてきたのは同じクラスの女子の田中七海。
シフト表を見ると彼女の当番は二時間も先だ。
「交代要員がまだ来ないんだよ。」
「まあ、大変!変わってあげようか?お昼まだなんでしょ?」
優しい言葉に、彼女が天使に見える。
だけど、ここには最低でも3人必要で、鈴木と佐藤を置いて俺一人だけ抜けるわけにはいかない。
「いいよ。悪いから。」
「もちろん、タダじゃないわよ。修斗君の………ね?言わなくても解るでしょ?教えてくれるならなんだってしてあげるわよ?」
………前言撤回、人の弱みに付け込む嫌な奴だ。
もー、一気に脱力した。
文化祭中だよ。
そのセリフ……今日一日くらい聞きたくなかったな。
「俺に聞くよりさ。クラウンゲームで王様になって本人に聞けばいいじゃん。」
女の子は、かなり頑張らないと王様になれないゲームけどね。
「やだ、か弱い女の子に戦えって言うの!!??酷い!信じられないわ!!」
か弱いかどうかは知らないけど、去年見ている限りゴール地点は協力者と力技が必要だな。
最後はゴール前で王冠の奪い合いだもんね。
「前にも言ってるはずだよ。教えられないって お客さんいるから後にして。何にしますか~?」
俺は田中七海の後ろに並んでいるお客さんに愛想良く注文をうかがった。
「えっ、いいんですか?えっと、マンゴーソース1つと、ストロベリー……」
「ふーん。じゃあ、ずっと交代要員来なくてもいいのね?」
田中七海は興味なさそうにメニューを眺めながら、俺だけにしか聞こえない声で言ってきた。
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