第3話 可愛い大福


あれから外は結構強めの雨が降り続いている。


天気予報で明日は晴れると言っていたけど……本当かな?


修斗はバスケ部の用事があるからって途中で分かれて俺一人で教室に戻った。


みんな明日の準備に追われて教室の飾りつけをしている。


そこに校内放送を報せるチャイムが急に流れてきた。


『ピンポンパンポ~ン』


『生徒会副会長の渡辺わたなべ 琉仁りゅうじんです。2年生にお知らせがあります。』


『ハーイ!!みんなのアイドル生徒会長の東條とうじょう 麗矢れいやもいるよん♪』


『こら、放送で遊ぶな。マイクを返せ。』


『いいじゃん。いいじゃん。俺も校内放送でしゃべってみたかったんだ♪やっほー♡重大発表があるよん♡』


『何を話す気だ。返せ。』


『ふっふっふっ❤ それはぁ、副会長と俺……。』


『こらっ!!やめ……』


生徒会役員の二人がドタバタとマイクの取り合いの実況放送している。


クラスメイト達は頭の上に?マークを浮かべて不思議な放送の感想を話している。


「なにしてんだろう?」


「さあ?」


ゴンッ! という音の後に、ハウリングが響く。


その音にかぶせるように、後ろで生徒会長の痛がる声をマイクは残さず拾っていた。


『コホン、お騒がせしました。生徒会副会長の渡辺です。この所、クラウンゲームに関してヒントを出して欲しいとの多くのストーカー行為……じゃなく要望が多かったので、不公平がないように2年生全員にヒントを出します。ヒントは、私は可愛い大福が好きだ。 以上です。』


『ポンパンポンピ~ン』


本当に不思議な放送だった。


クラス全員の作業の手が止まり、文化祭の準備そっちのけでざわついている。


「?????」


「なんなんだ?今の放送……」


「副会長 可愛い大福が好きって小さい大福のことかな?」


「もしかしたら大福をプレゼントしたら王冠の隠し場所教えてくれるかも…」


「……………」


「……………」


ガタンッ!!


なぜか一斉にみんなが立ち上がって買い出し係だった俺の所に飛んできた。


「なあなあ、買い出しする物あるだろう?俺買いにいってきてやるよ。」


「あ!私もっ!」


かかりでもないのにみんな優しいなぁ。みんなの優しさに感謝しながら俺は断った。


「有難う。大丈夫だよ。今日は午後から雨になるって天気予報が出てたから昨日のうちに俺が買い出しに行って全部そろっているよ。」


「あ、そうなんだ……。」


皆があからさまに しゅんと元気がなくなって作業に戻る。


だが、すぐに思い立ったように席を立ちあがり


「あ!俺、トイレに行ってくる!!」


「私、職員室に行かなくちゃ!」


「先生に呼ばれてて……」


などと理由をつけて みんなは教室からいなくなってしまった。


がらんとした教室には俺一人だけ取り残された。


「………………。もー、なんだよー。みんなさぼってー。全然優しくないじゃんか~~。」


そこへ修斗が戻って来た。


「可愛い大福か…可愛い……」


「修斗っ!」


「ん?あれ?ナギ、一人か?」


「そうだよ。もー、これじゃ作業、進まないよ。みんなどこに行ったんだよ。」


「ああ……大福を買いに行ったんだろ。………あの人はそんな単純なことしないと思うけど……」


「? 大福?なんで?」




************ 1時間後 ************




大量の大福を手に持ってクラスメイトが戻って来た。


「なんであんなに怒るかな。自分で言ったくせに。」


「なんだよー。もー、この大雨の中買いに行ったのに!!大福って言ったじゃんかー。」


「私なんか老舗の所まで行って買ってきたのよー。酷いわ。」


「でかいから いけないのかな。」


「でかくても小さくても味は一緒じゃんか」


皆は口々に文句を言っているが文句を言いたいのは俺の方だよ。


「もう!時間がないのにみんなどこに行ってたんだよ?!」


「い、岩崎……あははっ、差し入れ、そう差し入れしようかなって思って買い物に行ってきたんだよ!」


「そうそう!! 疲れたときは甘いものが一番だから!!食べて食べて!!」


机の上にはコンビニで売っている物から、老舗の包み紙に丁寧にくるまっている物まで様々な大福が並べられた。


100個以上あるかも知れない。


「凄い、本当に修斗が言ってた通りになった。」


「………やっぱりな………」


修斗は小さく何かを呟いて考え込んでいる。


自分の予想が当たったのに全然嬉しくなさそうだった。


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