第17話 レイド(中)!

「敵が来るよ!ゼフィンとトワは遠距離攻撃でお願い!私とミクとシエルは敵の注意を引くよ!」


ミズは素早い判断で皆を率いて戦う。

敵はレベル250という事もありかなり素早くミズとミクとシエルは反応が遅れる。

ゼフィンとトワは遠距離から弓と銃を使い敵をひたすら打つが敵は全てを避けながらミズとミクとシエルに攻撃している。


「あいつなんか強くない?」

「多分ですがあいつは素早さに特化していて攻撃力は低いと思います、実際私より速いと思います。ステータスが見れないのでまだなんとも言えませんが少なくとも攻撃力は4000から6000程でしょう」


当たり前の事を言っているようにも思えるが戦闘中は思考がほぼ停止してしまう。

その中でこのかなり的確な攻撃力を察知するのはスキルなどないと難しい。

だが敵が攻撃を辞めてくれるわけもなくミクを中心として襲いかかってくる。

ミクは敵の攻撃があまりにも素早いので一旦距離を置こうと離れようとしたところ、それを察知されていたのかすぐに標的が変わり1秒足らずでシエルの元に移動し連撃を繰り返す。


「シエルごめん!!」

「任せてください!!!!!なんとか抑えます!」

「シエル!私も敵の背後から支援する」


ミクはかなり攻撃を喰らっていたのか回復薬を使う、その間にシエルはなんとか攻撃を耐えておりミズも背後から何度も攻撃するが敵は予知能力でもあるのか全ての攻撃が回避される。

しかも敵のHPを見ると1ミリも減っておらず少し絶望しそうになる。


「ねぇ、こいつ真面目にどうやって倒すの??」

「とりあえず私達は遠くからひたすら打ちましょう、何か敵の弱点を見つけれるかもしれません」


遠距離系の技を扱うトワも少し焦りが見えたのかゼフィンに何度も相談する。ゼフィンは冷静に敵を分析してから倒すらしく同じ攻撃をひたすら打つ。

そんな中、敵がついに本格的に動き始めるのである。敵はシエルに目にも見えぬ早さで連続技を繰り返し出しシエルを追い詰める。なんとなシエルの持っているスキルの透明により身を隠す事が出来たがそれも察知していた敵はすぐにまたミクの元に標的を変え連撃技をくりだす。

あまりにも急すぎる標的変更やあまりにも速い剣技にミクの持っている受け流しのスキルもほぼ無効になりつつある。


「こいつまじで速い……ミズ!援護ほしい!」



援護したいけど意外とこっちにも攻撃して来て援護が出来ない……

どうしよ、こいつマジで攻撃当たらないじゃんかよ

まだ遠距離の攻撃避けてるしよ


「分かった!なるべく早く行く!」


ミズはミクの援護になんとか行こうとするがどうしても隙が見えず移動が出来ない。

遠距離攻撃のシエルとゼフィンも敵が早すぎて援護という援護にはなっておらずシエルはミクの援護には行くために姿を現すが敵が異常に早いため手が出せない状態になる。


「一体どうすれば……敵はそもそもなんの能力もってるの……」


まだこのゲームのスキルなどについて甘いミズには考えても考えても分からない、レベル250くらいになるとスキルなどはたくさん増えているためミズにとっては未知なスキルもある。そんな中、ゼフィンが他のみんなに敵の弱点を少し大きな声で話し出す。


「皆さん!敵は複合か透身のスキルを持っていると思われます」

「複合?透身?」

「はい、複合というのは体の1部を別の場所に移動させる事ができ外見は変わりのないという上位スキルです、透身も複合と似ていて体の1部を透けさす事ができこれも外見は変わらないので結構分かりにくいスキルです」


スキルを説明すると敵はbotユーザーなので少し不穏な表情をし、ゼフィンの元に物凄い速さで移動し連続技をくりだす。

ゼフィンは敵より約200ほどレベルが高いため速さは追いつけないが体力は異常にあるので避けずにひたすら敵の目の前で各部位に打つ。それを見たトワも左右から強烈な技を連続で繰り出し敵のHPを減らしに行く。


「行っけ!!!!!」

「これで終わりです」


敵はかなり焦っておりひたすら攻撃されているのにも気付かずにゼフィンに攻撃する。

だがその攻撃もゼフィンの最後の一撃によりHPが0になり攻撃が停止する。

皆が勝ったと思い気を緩ませようとした時、やっと敵が本性を見せたのである。


「グララァァァァ!!!!」


なんと敵は急に雄叫びを上げ地面から立ったのである。確かにHPは0のはずなのに敵は立ち上がり皆は呆然とする。その数秒後、敵のHPはマックスまで回復しレベルが更に上の300まで上がったのである。


「まだあんの??」

「だいたいギルドの最初のボスって弱いイメージあるんだけど……」


ミクとトワは意味が分からないという顔で敵の顔を見る。シエルは乗り気なのか元気満々でありゼフィンは冷静に敵を観察している。

その頃ミズは敵が復活したと言うのにお腹が痛くて1回ログアウトしてトイレに行きたいのである。



おいおい、今やっと面白い展開になってるのにお腹痛いとかよ……

ついてない、早く倒してトイレ行きたい。

ここでみんなにトイレ行きたいとか言ったら絶対に嫌われる。

これは一大事件だ今すぐにあの敵倒そう。


こうしてミズは速攻で敵を倒すために敵が攻撃してくる前に皆に指示を出す。


「みんな、さっきと同じ形で攻撃してシエルはは透明のスキルを使いながら敵の背後に向かって攻撃、私とミクは敵の複合か透身か分からないけどそのスキル対策としてひたすら攻撃、トワとゼフィンも私達が上半身をひたすら攻撃するから下半身を攻撃して!」


思わぬ的確すぎる指示に「本当にミズ?」などと声が聞こえるがお腹が痛すぎるためそんなのはどうでもいい。とりあえず全力で敵の元に移動しミクと共にひたすら上半身を狙い攻撃する。トワとゼフィンも遠距離からひたすら攻撃を繰り返し確実に敵の体力を減らしていると思っていたがふとミクに問いかけられる。


「ねぇ、こいつさっきと同じ敵なの?攻撃もして来ないよ?」



確かに攻撃してこない……

しかもHPも減らない……

どういう事?

さっきとはまた違うスキルとか覚えてんの?

でも体に攻撃は通らないし……

まさかスキルが中位から上位に進化したりしたとか、


そんな事を考えながら攻撃していると敵が右腕を肩まで上げ少し小さい声で囁く。


樹冠じゅかん


その言葉を発した瞬間、敵の手から大量の木が生えてきてミズとミクはその木に捕まりトワとゼフィンがくりだした技に当てさせられる。それに気付いたトワとゼフィンは攻撃をやめ的に接近してミズとミクに絡みついている木を破壊しようとひたすら攻撃する。


「この木なんなの、壊れないんだけど」

「レベル425の武器でも壊れないって事は相当やばいですね」


トワとゼフィンは1度攻撃をやめ距離を置く事にする。その間に敵の背後に透明のスキルで隠れていたシエルが一撃必殺の技、天地一変てんちいっぺんという技をくりだす。


「喰らえ!!!!ついでに死ね!!!」


だがその攻撃は分厚い木により封じられシエルまでもが木に絡みつかれる。絡みついた木はミズ達のHPを少しずつ奪っていき敵の体力が限界を超え増えていくのである。


「このままじゃまずいですね、ミズ様が死んでしまう……」

「確かにやばいねぇ、でもこの状況2人でどうにか出来る?」


その質問にゼフィンは返す事が出来ずにその場に立ち尽くす2人、だがその間にもミズ達のHPはみるみる減っていっている。既に捕まって30秒しか経っていないミズとミクの体力は半分を切っており、かなりやばい状況になっている。そしてトワとゼフィンは依然といいアイデアが思いつかずその場に立ち尽くしてしまう、だがゼフィンは敵の体をもう1回じっくり見るとある事に気付いた。だがそれをトワに話している時間は無くもう賭けるしかないと思いトワに話しかける。


「トワ、お願いがあります」

「お願いって?」

「私があの敵を倒すとまでは言いませんがミズ様達をあの木々から解放するので解放した瞬間にトワの罠のスキルで敵を封じ込めて雷の技を放って下さい。またその後で作戦は伝えます」

「なんか危なそうだけどそれしか案は無さそうね」

「これぐらいしか思いつかなくてすいません」

「いやいや思いつくだけで凄いよ、作戦は分かった。やってみる……」

「お願いします」


こうしてトワとゼフィンの作戦が始まる。

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