美少女に心を落とされたので落とし返す 【600pv越え!?(゜д゜)】~名家の子女が多い学園で繰り広げられるラブコメ~
三毛猫@湿ったチワワ
第1章
プロローグ
スタッフから手渡されている台本を握りしめて、頭をフル回転させ何度も繰り返す。
今日はテレビドラマの撮影日。
僕は子役としてピアノコンサートに来た主人公のライバル役を演じる事になっている。
別にここでいきなり渡されてそれを覚えている、という訳では無い。何度も練習してきた台詞だ。何度だってやってはいるが、舞台に立つのはいつだって緊張する。
衣装を子供用の黒を基調としたチュニックタキシードを着れば、更に緊張のボルテージが上がっていく。
心臓のなる胸を押さえつけて台本を置き、自分がライバル役として演奏するピアノの手の動きを机上で指をトントンと叩いて確認。
手を夢中で動かしていると、楽屋の扉が叩かれ、先生が顔をのぞかせた
「
そろそろ準備をお願いします。」
「はい、先生。今行きます。」
そう、今の僕は子役、秋本和哉だ。
出来る、僕なら。
そうやって自分を励ますも、まだ吐き気がする。トイレにいってから、舞台裏へ向かおうと思い立ち上がる。気がつけば、残っているのは僕一人だった。なるほど。だから子役達の楽屋なのに僕だけが呼ばれたのかと今更ながらに納得しつつ余計に自分の緊張具合を更に意識してしまった。
トイレについたら、顔を洗い。うがいをしてから水分補給。
顔をしっかりと拭いてから道を戻っていく。また殺風景な廊下がしばらく続いたら、現場に着く。
指が震える。ダメだ。こんな調子では良くない。
左手を右手で抑え込もうとするが、右手も震えていて結局震えたままだった。
「ねぇ、大丈夫?」
「うん」
顔色が悪かったのか、近くにいた女の子が心配そうに話しかけてきた。
頭がいっぱいいっぱいでそれしか返せなかった僕に更に話しかけてくる女の子
「そういうときはね、周りの人をみんなカボチャだと思えばいいんだよ」
「カボチャ?」
「そう、皆カボチャだと思うの。そうすれば、怖くないよ」
「カボチャに…。君もそうしてるの?」
聞き返した僕に笑みを深める女の子
「うん。おばあちゃんがそうすれば緊張しないよって教えてくれたんだ」
「なら僕もカボチャだね」
「あら、確かにそうだね。君が考えれば私もかぼちゃ。…なんか嫌だね」
二人でクスクスと笑い合う。
固まっていた心が溶かされていくような気がした。
そこでようやく、彼女の姿が目に入ってきた。赤のドレスにそれに合わせるような赤い靴。髪はハーフアップで、左耳近くに付けられた蝶の髪飾りがよく似合っている。
「ねぇ、名前きいてもいいかな?」
「芸名?それとも実名の方?」
「実名がいいな」
「僕は
「ん、九条くんね。
私は――――」
そして撮影も無事終わった数日後。
僕は額に傷を負ったことで、芸能界という煌びやかな世界には戻れなくなった。
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