誰か!私の兄を、私のかわりに殴ってくれませんか!?
猫のまんま
これが私の兄です
私は、社会人になってまだまだ一年目。特に夢とか、やりたいこともなかったので実家からもあまり遠くない。給料もそこそこの会社に入社した。
職場の人はみんな優しいが、覚える仕事が多くてあまり要領のよくない私は、入社そうそう苦労している。
はぁ……つかれたなぁ。
そんな新人に任せられる仕事なんて、たかが知れている。
私は、会社の人に迷惑をかけないことだけを心がけていたから、どちらかと言うと体よりも心の疲れの方が多い。
「ただいま~……」
今、目の前にベットがあったらダイブしているだろう。
「おう、おかえり!」
玄関を開けると、私の前に寝癖がついているボサボサ頭の男性が立っていた。
私のバカ兄だ。
「お母さんは?」
「買い物」
「あ、そう……」
私は、そのまま兄に絡まれないよう兄の横を靴を脱いで通り過ぎようとする。
だが、すぐに兄の手で私の行く手を阻まれた。
「一緒にテレビゲームをしようぜ!」
兄に、親指を立てられた。
「……チッ」
「まさかの舌打ち!?」
兄には、今の私の姿が見えていないのか。心身くたくたな体をベットにダイブしなきゃ、という衝動を頑張って今抑えているのに。
あろうことか、この兄はそれを邪魔しようとする。
「……とりあえず、一発殴らせて」
「なんで、一発殴られるの!?おれ!?」
「見て、わからない?……私、仕事してきたの!お兄ちゃんと違って!」
「お兄ちゃんも頑張ってさ!今、100レベル越えたとこ!」
……ダメだ、こいつ。早くなんとかしないと。
「ぐへぇ!なんだ、妹よ!いきなり殴ることないじゃないか!」
「……会話するだけ無駄って気づいたの」
「ひ、ひどい!!」
口では、そう言ってはいるが体をくねくねさせてヘラヘラしている。最高に、気持ちがわるい。
「そんなひどいこと言わずさ~。一緒にゲームしようよ~1人じゃつまなくてさ~」
くねくね、くねくね。
「――――死ね、クズ!」
私はたぶん、ゴミを見るような目で兄を見ていた。実際、ゴミだと思っている。
「クズでーす!だから、一緒にゲームしよ?」
しかし、兄にはダメージは聞いていない。むしろ、すり寄ってきた。ヤバい、鳥肌が立つ。
「し、な、い!!」
「すー…る!」
ヤバい、ウザイ。
「じゃあ!じゃんけんして決めようか!最初はグー!じゃんけん!……ぐへぇっ!?」
私は、グーで殴った。後悔はない。
「やったー!妹がグーで、俺がパーだったから俺の勝ち!さぁ!一緒ゲームしよ?」
兄は、何かがパーだったらしい。
私は、そんなことは無視をして二階の自分部屋に向かう。まともに関わっている自分がバカらしい。
「えぇー!マジで部屋に戻るのー!アリエナーイ!」
どうやら、本当にうちの兄はパーだったみたいだ。私の知ったことではない。
あれが、私の兄である。
私より、四つ上の歳で言わずもがな独身。むしろ、女性といるとこなんて母親以外で見たことない。
ついでに、実家暮らしの無職。一年前まで仕事に就いていたが、社宅を出てきていきなり辞めてきた。やることができたと言って。
この一年間、兄が何をしていたかなんて知らない。そもそも、知りたくない。
基本、あの兄は家にいて自分の部屋にいるかリビングでゲームしてるかぐらいしかない。興味なんて湧かない。
両親は、呆れるを通り越して見放している。放置だ。
自分の生活費とかは一様、三年間仕事をしていたから払っているが、いつまで続くかは私の知るところではない。
「よし!妹が一緒にやってはくれないけど、さっきの続きするぞー!コントローラー二つを1人で操作してやる!!」
あの感じじゃあ、お金のこととかあまり考えてない。自分の現状ですら、わかっていない可能性もある。
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