出会い
「ほっ」
右手に握った剣で飛び掛かってきた鉱石獣――オオカミみたいなやつ――の腹を切り裂く。
正式名称は鉱石獣タイプウルフなんて名前だ。
それが灰になっていくのを見届けて残った鉱石を回収する。
昔は朝から晩まで掘ってばかりだったが、今じゃ朝から晩まで戦闘だ。
戦闘で手に入れた鉱石は帰ったら換金する。ウルフので五百円くらいだが、一万くらいないと一日生きていけない。俺達感染者はとにかく燃費が悪い。身体能力の向上にテクニックの使用、とにかく腹が減る。
だから俺たちは戦わないと生きていけない。
次の獲物を探して歩いていると、岩陰からウルフが飛び出してきた。飛び出してきたって言い方は、正しくないな。
正しくは飛んできた。飛ばされたのか、弾かれたのかわからないが。誰かが戦闘しているのは確かだ。
立ち上がったウルフは岩陰に走って行って、また飛んできた。普通ならここで何かしらの攻撃かあるはずなんだが、何も起こらない。負傷してるのか?
また飛んできたウルフを切り伏せて、岩陰を覗けばそこにいたのは子供が二人。よく観察すれば顔立ちや体格が同じ双子だった。
片方は鉱石変化の症状がみられ、もう片方は人外変化の症状がみられた。
外見から察するに六歳前後ってところだが、なんだってこんなところに子供がいるんだよ。考えられる可能性は迷い込んだか、連れてこられて置いて行かれたか。どちらにしろ大人とここに来たには違いない。それに身を守るだけならできてるみたいだしな。
双子の周囲には半透明球体が見えた。
おそらく人外変化してる子供の方が、結界系のテクニック持ちだ。
さて、なんて声をかけたものか。あきらかに警戒されてるんだが。
「あー俺はお前たちを傷つけるつもりはない。だからその結界解除してくれないか?」
「……」
「ほら、食べ物やるから。お腹すいてるだろ?」
「たべもの……」
まだ駄目か? 食べ物って言った瞬間反応したが。でも見捨てるのも後味悪いしな。仕方ない秘密兵器を出すか。
「よしわかった。甘いお菓子もやろうどうだ」
「あまい」
「おかし」
お菓子の存在をちらつかせた瞬間、結界が解除されて双子が突撃してきた。
「たべもの!」
「おかし!」
「やる! やるから放してくれ」
地べたに座って、俺の持ってきた携帯食料とお菓子を食べ続ける二人。
にしてもこいつら着てる服以外なんも持ってないのはどういうことだ?
鉱石獣はアリスの周りに巣くってる。だから必然的に俺達、感染者の住む場所はアリスの周辺になる。安全圏と呼ばれる、アリスの四方に四つの居住区がある。
この四つだ。
俺はノース地区出身で、ここはノース地区に近い場所だからこいつらもノース地区の住人だと思うんだが。
「お前たち何番街に住んでんだ?」
「「?」」
「いや二人して首傾げられてもな。お前たちどこから来た?」
「ままさがしたの」
「でも気づいたらここにいた」
「気が付いたらって言われてもな」
お母さん探しててその最中に誘拐されたか? でも誘拐したところで感染者だから意味ない。いや結界能力目当てか?でも食費増えるだけだからな。
「どうした突っついてきて……全部食べたの?」
「「うん」」
俺の持ってきた食料がほとんど消えた。この数分で。
「まだ腹減ってる?」
「「うん」」
「実はもう手持ちが」
((しょぼん))
「家に帰ればあるにはあるけど」
((キラキラ))
「来る?」
「「行く!」」
途中で買っていかないと俺の分がなくなりそうだなこれ。
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