.68 終話
天気がいいから。と、物資探しにすぐ参加する。ユウキも行きたかったが止められる。ここら辺りの地理は松浦は詳しくはないが主要な場所は知っている。
松浦は暖かいスープをもらい食べながら、他のメンバーに、地下鉄はもちろん、学校にも人間が居る。他に何ヶ所か人間が住んでる場所を地図を示しながら聞かされる。
あの車庫の話をする。物はともかく、太陽や雪のかぶっていない車は魅力だとリーダーは言った。サビていなければなんとかなるらしい。最低でも部品は欲しい。と。
再び元の道を戻る事になった。煙の事を伝えるも、あの辺りもいつかは探索しようと考えていたらしい。今までは反対側にある大きな街の方を探索していた。
不思議な事にあれだけの煙が立ち昇ったにも関わらず地下鉄のヤツらも、他の人も誰も来ていなかった。
おそらく、何かの誰かの罠だと考えたのだろう。が、総勢の意見だった。
誰にも煙は気付かれなかった。とは考えられず、松浦もそれ以外考えられない。
表の道から車は出せず、断念せざるおえなかった。中の出せる物だけを窓から投げ出し運ぶ。
車はバッテリーなど使える部品だけ持ち帰る。
サービスエリアの人達は武器を持ってる者は少なかった。争いとかはないのだろうか?ならば何故、山ちゃんは俺を騙そうとしたのか。その理由は永遠に分からないだろう。近づいてまで知りたくもない。
争いは数の多い方が強い。それだけは分かる。
高速道路まで何往復かし、手作りの大きなソリに物資を乗せて運ぶ。
車は遠出をする時のみ使うらしい。
山で食料問題が解決出来るのが強い。
山菜やキノコ、山芋に始まり川魚、イノシシやシカ、ウサギ、タヌキ。
よほど人数が増えない限り飢え死にする事はない。
丁寧に教えてくれる人の言葉を聞きながら帰宅する。
サービスエリアの施設の隅に衣服は山のように積んであった。
欲しいのは薬品、調味料、車の部品、工具類。
三年生き延びた人間は誰もタフだった。だが幼い子供と老人は居なかった。ユウキが一番最年少だった。
ゾンビ対策は感心する程、万全だった。そもそも高い場所にある高速道路。そこに来るゾンビの数は少ない。それでもやって来たゾンビは高速道路から下の川に転がり落ちるような竹で作った仕組みを道路に造っていた。道路が斜めになるような仕掛けだ。
一度に大量のゾンビが来たら壊れてしまうがそんな多くのゾンビは来なかった。
襲って来る人間は一度も来ていない。逆に通りがかりの人間が助けを乞う。ここのリーダーは全て受け入れた。
人数は増えていくも出て行く人は皆無だった。
結局、松浦達も二年間そこで仲間として過ごした。佐々木は早くもリーダーと同じくらい必要な存在となっていた。
大きな不幸も不具合も全くなかった。強いてあげるなら虫歯の痛みを訴える者と、お腹を下す者が居る事。
数少ない女の取り合いや、女同士の妬み。男同士の権力争いもアユミが上手く立ち回っていた。アユミの人間関係を円満にする口の旨さや行動は、リーダーに一目置かれるくらいだった。
松浦とユウキはほとんど一緒に過ごした。どこに行くのも一緒だった。歳の離れた兄弟じゃないか。とからかわれるくらいだった。
そしてその年の春に飛行機の音が聞こえ、大量のビラが撒かれる。ビラには九州方面から順に安全区域を設けていく事。高速道路と新幹線通路を整理していくので西日本へ移動を。などの文面と地図。
誰もが歓喜した。
松浦とユウキは結局、アユミの裸を見る事が出来なかった。触る事も。
復興後、松浦はアユミと佐々木親子とは離れ離れになったが、いつまでも仲良く連絡を取り合った。
日本は瞬く間に平和になった。他の国の支援に一番に取り組めるくらいに早かった。
松浦はもしあの過去に戻りたいか。と問われれば、戻ってもいいかも。と思った。
「辛かった時もあったが本当に楽しかったんだ」
松浦は人生で初めて出来た彼女にそう言った。
〜終わり〜
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます