第35話 記憶を取り戻せ!
僕達は、神視点でのレオフェンの成り立ちを教えてもらった。
この話、幾つかの疑念は残るが、大まかな流れを把握した事で、選択肢を絞り込む事が出来る気がしていた。
「ところでウルド、ウラノスはまだ封印されたままなのか?」
「はい、最下層に封印されています」
「今の神話だと魔界と奈落は封印されているのに地上に干渉してきた事になる。奈落はゲートだったから違うかもだけど、封印は解けているのか?」
「封印は概ね残っていますが、一部破壊されてしまいました」
「オヤジと母さまが消息をたった世界の果て、プレジションだけな」
僕はマップでプレジションを確認した。世界の果てと聞くと北端ってイメージだが、プレジションは大陸の南西部だった。
「魔王パズズがプレジションの封印を破壊したです」
「パズズの仕事だったのか……」
「んと、今日の本来の目的はね、ベルとユイリにパーティーを組んで欲しいと言うお願いだったんだ……」
「ん、なんでだ?」
「ユイリは神威の影響を受けると強くなるから、神威を使える神といた方がいいと思ってね。それがここまでブッ飛んだ話になるとは想像してなかったよ」
「そうか……でもユイリは主神様だからな、俺の神威よりも主神としての力を何とかしたほうがいいんじゃないのか? 母さまもだけどよ」
「それだよな……」
「アル達は、まず記憶ではないでしょうか?」
「ユイリさんやアンナさんも神としての記憶は失われているようなので……」
「「そうですね……」」
「分かった」
「以前お願いされた、所縁のある場所のリストアップはしておきますので、その辺を踏まえて、お仲間と今後の方針を、検討されたほうが良いかと思います」
「お願いするよ、ちょっと頭も整理したいし一旦学園に戻るよ」
僕たちはゲートで寮のリビングに戻った。
「あの……」
「はい?」
「アルは随分砕けた話し方でしたね」
「あはは、あの3人の前だとそうなっちゃいますね。やっぱり娘だからですかね」
「あれ聞いちゃうと普段の話ぶりが、ちょっと他人行儀に感じるわね」
「じゃぁなるべく崩すようにしますね」
「言ってるそばから全然ですね」
「ユイリも基本敬語じゃないですか?」
「ま……まあそうなんですけど……」
「無理しなくても自然体でいいんじゃない?」
「そうですね……」
「とりあえず、みんなのところへ行きましょう、多分、修練場ですよね?」
「そうね」
「あ、この事は話しますか?」
「内緒でお願いします……アルの件とは別意味で、衝撃が大き過ぎます」
「あはは……了解です」
「この事を内緒にすると、進展があるようで全くなかったことになるわね」
「そうでもないですよ。魔王の成り立ちも、聞けたのですから」
「確かにね……」
「アンナ先生とユイリの衝撃には敵いませんけど……」
「まあ……それは……」
僕たちは、皆んなと合流するために修練場に向かった。
僕達が来たのも気付かず、皆んなは訓練に勤しんでいた。
訓練はジニー、ジュリ、チームとレイラ、アシッド、メイ、スラッシュ、チームに別れ対戦形式で行われていた。
ジニー、ジュリ、チームの強さは圧巻だった。ジニーがMAG02で弾幕を張り、接近と攻撃を許さず、その隙にジュリが上級魔法をぶっ放す、攻守を兼ね備えた隙のない戦いだ。
数に勝るレイラ、アシッド、メイ、スラッシュ、チームだが、ジニーの弾幕を捌くのが手一杯で、反撃の糸口すら掴めていなかった。それと言うのも、攻撃の要であるレイラしか、ジュリの上級魔法を防げないからだ。
「ジニーとジュリ凄過ぎませんか?」
「完封してますね」
「レイラの素早さをこんな強引な戦法で抑えるとはね……」
「レイラのスタミナがもう限界ですね」
次第にレイラの手が回らなくなり、訓練はジニー、ジュリの圧勝に終わった。
「皆んなお疲れ様です」
「あ、アル——っ」
いつものようにジニーがスキンシップで喜びを表す。
アンナ先生とユイリの視線が、いつもに増して痛い。
「見てた?見てた?」
「……はい」
「MAG02やっぱ凄いね!」
「使いこなしてるジニーも凄いですよ」
「その武器は反則級だな……」
レイラは少し悔しそうだ。
「褒め言葉と思って受け取っておきますね」
「首尾はどうですか?」
「あまり進展はないわ、でも、アルくんの要望で王都から1人転校してくるわ」
『『ライリさんだ』』
「何で皆んな分かるんですか?」
「アルと親密だったからな、英雄特権でまたハーレム要員を増やす気なんだろ!」
「んなわけ!」
「ハーレム野郎の考えそうな事」
「生意気」
「アル……もう少し節操を」
「お前と言う奴は……少し目を離すと……」
「流石だねアル」
「違いますよ! ライリには対抗魔法の開発を手伝ってもらうんです!」
「まあまあ重要な役割だな……なぜ彼女なんだ?」
「今のところライリと僕しか適任者が居ないので」
「それも悔しいですね……」
「学園長でも出来ませんから、出来る方が特殊なんですよ」
「そんな特殊なことを出来るアルは一体何者なんだ?」
「アンナ先生やユイリ達には話していましたが、実は僕、記憶が無いのです」
「「「え」」」
「僕は目覚めてすぐにパズズと戦いました。目覚めたばかりでもパズズと戦う力がありました。なぜ戦えたのか……? 自分が一体何者なのか……? 僕自身が知りたいです」
「マジかよ……」
「だから僕は対抗魔法と並行して、自分探しの旅に出ようと思ってます」
『『えー』』
「旅って言ってもゲートで放課後には帰ってきますが……」
「いつでも帰れるのを旅って言うのか……」
「私も付いていきます」
「ユイリ大胆!」
「いえ……そう言う理由じゃ無いですよ?」
「じゃあどう言う理由なんだ?」
「そうですね……見ていただいた方が早いかも知れません」
「聖なる光の件ね…」
「アル、いいでしょうか?」
「分かりました、でも場所を、変えましょう。此処では無理です」
僕達はゲートで、ムスタング平原に向かった。
「ちょっとキツイかも知れませんので皆んな離れていてください」
「キツイ?」
「それも直ぐに分かります。キツイと思ったら絶対離れてくださいね」
「アル、模擬戦でいいですね?」
「はい」
「最初から全力で行きます。アルもたまには実力を見せてください」
「分かりました」
僕は神威を、ユイリは聖なる光を展開した。
「なっ、なんだ!?」
「確かにキツイですね……」
間を置かず、2人の模擬戦が始まった。
宣言通りユイリが全力で突進してきた。
『神の剣』
僕は神の剣でユイリの突進を防ぎ、そのまま神の剣で攻撃に転じた。ユイリの戦闘センスは相当なものだ、12振りの神の剣を上手く捌いている。しかし、今日はユイリのリクエストに応えるつもりだ。
僕はMAG01を取り出し更にユイリに攻撃を加えた。しかしユイリの聖なる光が輝きを増し、僕の攻撃を全て捌ききった。
神威を上げれば僕も強くなるがユイリも強くなる。純粋な力比べなら最悪の相性だ。ユイリは神の剣とMAG01の攻撃をかいくぐり接近して来た。
『神の雷』
神の雷で目を眩まし、テレポートでユイリの背後に立ちMAG01を突きつけた。
「参りました……」
勝負は一瞬だったが、内容は濃かった。最後のMAG01をもしユイリに向け発射していても致命傷にはならなかったと思う。そうなると返す刀で僕が討たれていた可能性もある。
「これが理由です。なぜアルの技と私の技がリンクするのか私も知りたいのです」
「あれ?」
皆んなは言葉を失っていた。僕たちの模擬戦は人間の限界を遥かに超えたものだったのだから仕方がない。
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