第33話 作戦会議

 翌日僕達はゲートでテレキャスに戻った。

 皆んなの事はレイラに任せて、僕とアンナ先生とユイリは学園長に王都での出来事を、報告にきていた。


「なるほどな……」


「魔王の話通り、魔王が軍と無関係だったとしても、決戦時、魔王軍が呼応する可能性は非常に高いと思います。ある意味魔王が囮になるわけです。魔族サイドからすれば、かなりの好機です」


「まあ、ある程度は予測しているさ、各地でまだまだ魔族軍のと小競り合いもある事だしな」


「今からできる事って言っても、主戦場がどこになるのかも規模もサッパリなので、各国連携して今まで以上に情報網を整備するぐらいしか有りません」


「もっともだな」


「それとは別に学園長、ひとつお願いがあります」


「言ってみたまえ」


「王都校のライリ・バオルをこちらに編入させていただくか、僕が王都校に編入するか、どちらかの手配をお願いしたいです」


 アンナ先生とユイリが怪訝な表情を浮かべる。


「ちょっ……ちょっとアルくん、それはどう言うこと?」


「また悪い癖のようですね……」


「違いますよ……」


「なんだ君は、王都でもご活躍だったのか?」


「みたいですよ、晩餐会もずっと彼女に付きっきりでしたから」


「さすがだなアル」


「だから違いますって!」


「何が違うのかしら? かなり言い寄られてたみたいだけど」


「そのタイミングで、このお願いですしね……」


「ははっ君は大胆だな、有事のどさくさに紛れて、彼女をものにしてしまおうというのか」


 全く信じてもらえない。


「信じてください……」


「まず、あなたの何処をどう信じていいのか教えてもらえる?」

 アンナ先生から辛辣極まりないお言葉をいただきました。


「私も聞きたいですね」

 ユイリも同じ気持ちだったみたいです。


「そろそろ辛そうだな?」


「……はい…」


「続きは、私との話しが終わってから、ゆっくりと楽しんでくれ」


「「そのつもりです」」


「…………」


「では、ライリと君をくっつける理由を聞かせてくれ」


「くっつけるって……」


「間違えてないだろ?」

 もう視線が痛すぎて泣きそうです。


「まあ……意味合いは同じかもしれませんが……」


「「ふーん」」

 この人の悪ふざけは時に致命傷になる。


「さあ、続けたまえ」

 続け難くした張本人が……


「えっと……ライリはですね……僕と同じく魔法のエレメントを感じる事ができるんです」


「ほう」


「ん? エレメントって何でしょう?」


「ユイリには話してませんでしたね、魔法には魔法を構成する要素があるんです。それがエレメントです」


「そんなものが…」


「エレメントを操作できれば、より強い魔法を行使できたり、新たな魔法を作り出すこともできます」


「そんな事、全く知りませんでした……」


「私なんか知らないどころか、アルくんに実践してもらったけど、チンプンカンプンだったわ」


「私もエレメントは感じれないな」


「「学園長も!?」」


「僕は、エレメントは普及してはダメな技術だと思っています。禁呪って言えばいいですかね……」


「確か、世界を滅ぼせるほどの威力がだせるのよね……」


「はい……ライリを側に置いておきたいのは、そういう理由もあります。彼女にはエレメントの危険性についても熟知していただかないと、彼女自身が意図せず禁呪を使ってしまう可能性があります」


「「怪しい……」」

 僕の信頼帰ってきてください。そもそもあったのかも疑問だが……


「魔王がやろうとしていることも恐らくそれです」


「魔王もエレメントを感じる事ができるのか?」


「直接エレメントがどうとは話していませんが、闇魔法は完成していると言っていたので、多分そうだと思います」


「アルくんが想定していた最悪の事態ってこと?」


「最悪の事態を想定すると、そうなります」


「でも、それだとオカシイですね……」


「そうよね……」


「最初に魔王の話を聞いた時から、違和感を感じていました。もし、そんな魔法が本当に使えるのなら、1年後と言わず、今すぐ使えば魔王の目的は達成できますよね?」


「それそれ」


「ユイリ、それは僕も考えていました」


「と言う事は、何か目星が?」


「ありません……でも、魔王は僕と会った時、

何か嬉しそうで、僕を待っていたかのように感じました。

もしかしたら僕じゃなくても良かったのかもしれませんが、

魔王にはまだ秘密があるのかも知れません」


「嬉しそう? 待っていた?」


「僕はそう感じ取れました。一緒にいたレイラにも聞いてみてください」


「まあ……魔王の事は今議論しても仕方なかろう、我々に分かっている事は、1年の猶予がある。その一点のみだ」


「そうですね」


「アル、君はライリに協力を仰ぎ、対抗魔法を新たに作りたいのだな」


「はい」


「わかった、世界の存亡が掛かっているのだ、彼女を本校に編入させるよう手配しよう」


「ありがとうございます」

 2人にジト目で見られた。


「しかし、大変になるな」


「そうですね」


「君のことだぞ?」


「へ」


「君もそろそろ男らしく『責任』を意識した方が賢明だぞ?」


 アンナ先生とユイリが激しく頷いた。


「え」


「アル、これは冗談ではない、君達はこれから世界の運命をかけた戦いに赴く身だ、君は魔王の前に、決着を付けなければならないことを残し過ぎだ」


 またもやアンナ先生とユイリが激しく頷いた。


「学園長……何を……」


「胸に手を当てて考えるといいぞ」


「はい……」


「それはそうと、魔王は何故王都にいたのだ?」


「あ……それは王都にいれば人類からも、魔族からも身を守れるからだと思います」


「そういうことか」


「はい、魔王が王都で戦えば、おそらく王都は消滅します。仮にクーデターが起きて魔族に狙われても、王都なら人類が必死で抵抗します。魔王からすれば王都が1番安全なんだと思います」


「そんなところだろうな」


「アルくんクーデターなんて有り得るの?」


「魔王の目的が世界征服なら、無いと思いますが、世界消滅ですからね……普通に反発はあると思いますよ」


「なるほど……」


「今出来ることの積み重ねしかないな、私は早速ライリの手配をしておく、状況に変化があれば知らせてくれたまえ」


「分かりました」


「「「失礼しました」」」


——「どうしましょう?とりあえず2人をウルド達に紹介しましょうか?」


「ウルド様たちに……」


「うん、特にユイリは連携が必要になると思います」


「それは何故?」


「ほら、この間試した『神威』ですよ。

ベルもなかなかの『神威』を使えますので、ユイリはベルと共に行動した方がいいと考えてます」


「なるほど……」


「なにそれ?」


「アルの学生服をボロボロにしたやつです……」


「あ、実践するっていったやつね」


「どうします? 実践してみましょうか?」


「いえ、先にウルド様達に会いに行きましょう」


「分かりました。ユイリもそれでいいですか?」


「はい」


 いきなり世界樹内はまずいと思い、世界樹の外までゲートで移動した。


「ウルド、スクルドは、はじめてだよね勇者ユイリと僕の担任のアンナ先生だ」


「はじめましてユイリです」「はじめましてアンナです」

「……はじめましてウルドです」「……はじめましてスクルドだよ」

「よう、久しぶりだな」


「「…………」」

 ウルドとスクルドが顔を見合わせた。


「さすが父さまだね」


「ん? なんのことだ?」


「あれ? アルも知らなかったのですか」


「ん? ん?」


「まさかベルも気付かなかったのですか?」


「何言ってんだ?」


「母さまと、主神さまだよね」


「「「へ?」」」


「ユイリが主神さまで、アンナは母さまだよ」


 衝撃の事実が告げられた。

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