バカがうつる

ロバートソン・J・サクライ

第1話

医療技術が発達すると共に、新しい病原体も現れる。


事の起こりは数か月前、ある男が医療機関を受診したことだった。


「違和感があるので検査して欲しい」


医師は心的ストレスの現れか軽い風邪などだと考えていたが、検査の結果、あるウイルスに感染していることが分かった


バカウイルス。なんともアホな名前だが、甘く見てはいけない。


このウイルス、とてつもなく感染力が高い。


だが、罹患しても、多少知能の低下はみられるものの、重篤な健康被害を及ぼすわけではない。


しかし、ウイルスが新種であったこと。その内容から、メディアで大々的に取り上げられ、社会問題になった。


政府は状況を深刻と判断し、総力を挙げて対策を行ったが、感染を食い止める事ができず世界中に広まってしまった。


問題になったのは感染そのものよりも、デマや偏見が発生したことだった。


周囲は誰が感染しただのしないだの、ウイルスは社会の潜在的な不満を炙り出し、各地で騒動が発生した。


最初に感染した男は隔離施設のテレビニュースを見て思っていた。


皆情報に踊らされている。


――バカだなぁ。


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バカがうつる ロバートソン・J・サクライ @tunasannd

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