第77話 知り合いかも
友人の佐川が高校一年生のときのこと。
薄暗くなった高校の校庭を友達と歩いていると、ふと誰もいないグラウンドの向こう端に立っている人影に気づいた。
暗くて誰かはわからないが、こちらに向かって手を振っている、というか両腕をぶんぶん振り回している。
知り合いかと思った佐川が手を振り返すと、隣にいた友達が「何やってんだ」とこちらを見た。
「いや、あいつが手ぇ振ってるからさ」
「あいつ? 何あれ、なんかでかくね?」
言われてみれば、明らかにでかい。身長をバックネットと比べてみると、3メートルは優に越えている。
「げっ」
佐川が思わずカエルみたいな声を出した次の瞬間、そいつは振り回していた両腕を前に突きだし、長過ぎる脚を動かしてこちらにひょこひょこと走ってきた。
「わー!!」
二人は後ろも見ずに駆け出した。裏門から出て、バス通りまで走ってからようやく辺りを見渡した。
大きな影はどこにもいなかった。
ということを、佐川は高校在学中にあと6回体験したという。
違う友人が一緒だったり、一人の時だったりという違いはあるものの、ほぼ同じ場所で、同じ流れを繰り返したそうだ。
「何で毎回手を振っちゃうの?」
と尋ねてみると、
「ぱっと見たときに、何でか知り合いのような気がするんだよね」
とのことだった。
確かに6回も再会していれば、すでに知り合いだと言っていいかもしれない。佐川は嫌がるだろうが。
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