第45話 自分の

 美羽さんがお風呂で体を洗っていたとき、石鹸の中から爪が出てきたことがある。

 石鹸がボディタオルにやけに引っ掛かるのでよく見てみると、何か薄くて固いものが埋まっている。そっと引っ掻いて取り出してみると、剥がれた生爪だった。

 ひとしきり一人で大騒ぎしたあと、恐る恐る爪を観察してみた。

 きれいな形で、ちゃんとマニキュアも塗られている。特徴的なラベンダー色と白のマーブル模様に見覚えがあった。

 つい先日ドアに挟んで剥がれてしまった、彼女自身の左手の中指の爪と同じだ。


 仮に自分のものでも、気味が悪いことには変わりないので、美羽さんはその爪を石鹸ごと、燃えるゴミの日に捨ててしまった。

 石鹸は海外の某有名メーカーのもので、友人の結婚祝いの内祝いとしてもらったものだった。

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