第2話 訪問


 専業主婦の熊谷さんは、その日朝から体調が悪かった。

 旦那さんを送り出した後、もう一度ベッドに潜り込んだ。すぐに寝入ってしまったが、チャイムの音で目が覚めた。ふと時計を見ると、まだ午前中だった。

 宅配便だろうかと思いながら、居間に設置されているカメラ付きインターホンの画面を見る。チャイムが鳴ると、自動的に画面が映るようになっているのだが、画面は真っ暗だった。

(チャイムが鳴ったと思ったのは、夢の中でのことだったのかしら)

 熊谷さんはそう思った。その時、右耳のすぐ後ろあたりから、

「なくなったかたかしら」

 という低い声がした。

 思わずぱっと振り返ると、ベランダに出るガラス窓一杯に、巨大な顔があった。

 レースのカーテン越しに、頬をガラスにべったりと押し当てているのがわかった。


 ただならぬ旦那さんの声に我に返ると、夜になっていた。

 熊谷さんは、インターホンの前で倒れていたらしかった。

 すべて夢かと思ったが、窓ガラスには顔を押し当てた時のような、脂の跡らしきものがついていた。

 それは、小柄な彼女の背丈ほども大きさがあったという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る