動乱二部

村上俊介

第1話


動乱(第二部)1


明治45年9月に明治天皇が崩御されて明治から大正に元号が改められたのです、この後を追うようにして乃木と婦人が殉死したのです、これを聞いた新太郎は、なんてばかな事をするのだ、

今は江戸の昔ではない、わしは弔問になど行かないぞと言うと、お鈴がまあそう言わないでお悔やみだけには行きましょう、子供も総て日露戦争で失い、早く傍に行きたかったのでしょう、

貴方は私が見取ってあげますよと言ったのです、


乃木の盟友であった、児玉源太郎もすでにこの世にはなく、日本海海戦の参謀秋山も病没してしまっており、山県と顔を合わせて並んで焼香して、精進落としで酒を注ぐので、現役は山県、

さんだけですなと言うと、西郷さんも日清戦争前に知床でなくなったそうですなと言うので、知っていたのですかと言うと、ハイ、神崎閣下は人が悪い、幸い西郷さんの名誉も回復されま、

した、


生きていると聞いた時は愕きましたよ、従道さんも喜んでいましたよと言うので、なぜ知ったのですかと聞くと、西郷さんの最期に村田さんが従道さんを訪ねてきたので、急ぎ軍艦に乗り、

知床に行き、枕元で話したそうです、名前も高杉と変えていたそうですが、事情を言って内密にするように言われたそうです、死に目にあえてよかったと喜んでいました、わたしも愕きま、

したよ、


誰にも話していません、奥さんは何回か会いに行かれたそうです、ご存知だったのですねと言うので、ハイ、奥さんにだけは本当の事を知らせておきましたと言うと、神崎閣下は何をする、

かわかりませんなと笑って酌をするので、小兵衛さんを助けられなかったのが残念です、日本も西郷、大久保、桂さんが望んだとおりの強国になりましたが、これからがさらに大変です、

力をつけて来たアメリカが今後脅威になります、


軍部は勝った事しか覚えていないでしょう、裏を返せばやっと講和にこぎつけただけ、と言う事はだれも理解していませんからなというと、一回くらい負けたほうが良いかもしれませんと、

山県が頷いたのです、席に山本と東郷が姿を見せてここでしたかと言うので山県が酌をすると飲み干すので、新太郎がこれで世界第三の海軍国になりましたが益々アメリカとの摩擦は大き、

くなりますなと言うと、


その為に88艦隊の建造が必須なのですが日露戦争で艦船の被害が少なかった為に新艦造船は議会は認めないでしょう、旧式の艦船の足の遅さでは艦隊運動をするのも用意ではありませんと、

言うので、このまま艦船の製造競争を続けても、我が国はとおていアメリカ、イギリスに勝てる国力はありません、わが国は質で両国に勝つしかないのですと言うと、東郷がやはり水雷を、

中心にするしかありませんかと言うので、


そうです、いくら大艦巨砲を作っても相手の艦船に命中させるのは至難の業です、照準を正確にするには飛行機による偵察が必須です、203高地のような要塞攻略には多大な犠牲を伴います、

飛行機による爆弾の投下により、被害は少なくなります、又上空からの偵察や照準観測に有効です、今の飛行機でも時速200キロはだせます、内燃機の発達により、益々速度は上げられるで、

しょう、


駆逐艦による、水雷攻撃と船の甲板から飛行機を発進させれば、どこでも攻撃可能となります、甲板は350mもあれば良いでしょう、巡洋艦から砲をとり除き離着陸できるようにすれば良い、

戦艦は相手の基地に、艦砲射撃をするのには有効ですが、これから先は艦隊が撃ち合う決戦はなくなります、飛行機による雷撃、爆撃が主流となりますよと言うと、東郷が飛行機ですかと、

言うので、


すでに陸軍はフランスから、飛行機を輸入して徳川大尉が飛行に成功しています、海軍も本格的に取り入れるべきでしょう、後は潜水艦を研究する事です、魚雷の性能も上げなれればなり、

ませんと言うと、山本権兵衛がそれでは神崎閣下の息子さんの新一君にやってもらいましょう、閣下には助言をお願いしますと言うので、飛行機と潜水艦の技術はドイツが進んでいるそう、

です、それを見に行かせる事ですなと言ったのです、


精進落としを終り久しぶりに八丁堀の自宅に戻ると、新一の妻である春子が出迎えて、お爺様は久しぶりですね、離れはそのままにしてりますと案内するので中に入ると、暫くはここに住、

む事にする、お鈴はわざわざ西伊豆から出てこなく済むのでその方が良いだろうと言うと、今回青山英和学院と合併して校舎を青山に移しました、私と春子さんが理事として運営にあたり、

ますと言ったのです、


それでは銭湯に行ってくるといって隣の富士湯に行くと、文蔵がお戻りでしたかと言うので、暫くはこちらにいるぞ又厄介になる、息子も警視庁に入ったと聞いたがと言うと、ハイ、赤坂、

所で刑事をやっていますと言うので、嫁は貰ったのかと聞くとハイ2人の孫もいます、ここからすぐの処に住んでいますと言ったのです、湯にゆつくり入り上がってくるとビールを出す、

ので、


飲み干しこれはたまらんと言って、おまえは幾つになったのだと聞くと今年で65になります、閣下が8才上ですから今年73でしょうと言うので、随分長く生きたもんだなもう直ぐ向かえが、

来るだろうと言うと、後20年は大丈夫ですよと言うので、生きているあいだに戦争がなければ良いがと言うと、なんでもドイツとイギリス、フランスとの仲が悪くなっているとの事ですが、

と言うので、


その辺が火種とならなければ良いが、ドイツは、軍備を増強しているそうなので困ったもんだな、日本がロシアの強圧を跳ね返したので、ロシア帝国は、衰退の一途をたどっているそうだ、

我が国への影響はなくなったが、ドイツは南西諸島をスペインから、譲渡させたそうなので、イギリスが警戒しているのだよ、アメリカは我が国を警戒しだした、日英同盟が邪魔と思って、

おり何とか英国と手切れさせようと思っているのだよ、


日英同盟を破棄すればもろにアメリカの強圧にさらされる事になり、ドイツに近づけばヨーロッパの争いに巻き込まれる事になる、ロシアに勝てたのは日英同盟があったからなのだが軍部、

の若い者は自力だと勘違いしているものが殆どだ、朝鮮、満州に駐屯している軍が、暴発せねば良いがと言うと、薩長土肥の派閥がなくなると、こんどは軍閥と言うわけですかと言うので、

人は群れるものだからなと言ったのです、


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