一年生コンビ登場とサンオイルイベント
「お、兄さ〜ん」
海から上がった良平がパラソルの影に入ってのんびりとしていたところ、聞き慣れた声がした。
ふと声がした方へ振り返ると、一緒に住んでいる彼女である桃花がピンクのビキニ姿で良平の方へダイブしてきたのだ。
「桃花? どうしてここに?」
良平を見た桃花がニヤリ、と口角を上げた。
「お兄さんに会いたくて来ちゃいました」
このビーチは貸し切りではなくて他にも人がおり、石垣島に来れば誰でも入ることが出来る。
恐らくは会えないのが寂しすぎて我慢出来なくなって来てしまったのだろう。
だけどいくら寂しいからって来るとは思ってもおらず、普段無表情の良平ですら驚いて目を見開いてしまった。
「はあぁぁ〜、お兄さん成分を補充します」
胸に顔をグリグリ、と押し付けて一日我慢していた成分を補充しているらしい。
海にいるのは横に置いてあるカバンに入っているスマホの位置情報を見て分かったのだろう。
「やっほ、お兄ちゃん」
「詩織」
まさか真面目な詩織まで来るとは予想していなかったため、今まで生きてきた中で一番驚いた。
青いフリルの付いたワンピースタイプの水着はとても似合っており、詩織を見ている男子が多い。
「何で二人が、ここに?」
一年生コンビの登場で一番驚いているのは一緒にパラソルに入っている恵里菜のようで、せっかく邪魔が入らないと思ったのに……と思っていいそうな彼女の表情が曇る。
「お兄さんのいるところに私がいるんです」
「あ、そう……」
桃花の一言に明らかに困惑している恵里菜は、「はあぁ〜」と盛大なため息をつく。
昨晩良平に告白した恵里菜にとって桃花はライバルであり、内心は邪魔としか思っていないだろう。
この修学旅行は恵里菜にとって最大のチャンスだったのだが、桃花の登場によりせっかくのチャンスが水の泡になったのだ。
機嫌が悪くなってもおかしくはない。
「桃花が寂しくて泣いちゃったから来たよ」
「ちょっ……詩織ちゃん、そういうことは言わないでよ」
寂しさで泣いちゃったことを詩織にバラされたからか、桃花は恥ずかしそうに頬を赤く染める。
どうやらバラされたくなかったようだ。
「明日の夜には帰ったのに」
たった数日会えない程度は恋人同士であっても珍しくないだろう。
むしろ毎日一緒にいる恋人同士の方が珍しいかもしれない。
予定で一緒にいれない日は必ずあるのだから。
「それでも寂しいんですよ」
アメジスト色の瞳はしっかりと良平の方をへと向いており、その瞳は本当に寂しかったんです、と訴えているかのようだった。
よしよし、と頭を撫でてあげると、桃花の表情が緩む。
修学旅行に乱入してまで来たのだし、よほど寂しかったのだろう。
「一日ぶりのお兄さん……抱きついているだけで子宮がキュンキュンします」
まだ午前中なのにとんでもない発言をしたが、桃花だから本当に子宮が疼いているのかもしれない。
二人きりであったなら、間違いなく桃花に押し倒されていただろう。
「お兄さん、海といったらサンオイルイベントですよね。ラノベとかにも出そうですし」
「確かにあるな」
ラノベで海に来たらほぼ間違いなく主人公がヒロインにサンオイルを塗るシーンがある。
「塗ってほしいです」
どこからか取り出したサンオイルを持っている右手で胸を抑えた桃花は、左手でビキニの紐を緩めていく。
ラノベの主人公であればサンオイルイベントは顔を真っ赤にするが、既に桃花の裸を何度も見ている良平の表情は変わらない。
「分かった」
せっかく会いに来てくれたのだから塗ってあげよう、と思った良平は、シートの上に横になった桃花からサンオイルを受け取る。
サンオイルを塗ってあげるのは初めてだから良く分からないが、ラノベのシーンにあったように、ヌルヌルの中身を手のひらに出して馴染ませていく。
「ひゃあ」
まだ冷たかったからか、背中にサンオイルを塗られた桃花が甘い声を出す。
ラノベでもサンオイルを塗られたヒロインがこういった声を出すが、現実の女の子も出してしまうようだ。
来ると分かっていたとしても、いきなり触られたら声が出てしまうのだろう。
「んん……やん……」
小刻みに身体を震わせている桃花は、良平にサンオイルを塗られて感じてしまっているらしい。
普段から身体を触られているからか、背中にサンオイルを塗られただけでも感じてしまう身体になってしまったのだろう。
「お兄さんに身体を触られる……幸せすぎます」
どうやら桃花はサンオイルを塗ってもらうのが目的ではなく、良平に身体を触って欲しくて塗ってほしいと言ったようだ。
丸一日触れ合いがなかったし、人前でガッツリと触れてもらう言い訳がサンオイルなのだろう。
「お兄さんは本当にテクニシャンですね。気持ちいい……やん」
ただ、背中にサンオイルを塗っているだけなのだが、先程から桃花の身体は震えが止まらない。
本当に感じてしまって我慢出来ないのだろう。
全くそのつもりはなかったのだが、どうやら普段からの触れ合いでも桃花を開発してしまったらしい。
背中以外にも腕や足などにサンオイルを塗られている間、桃花はずっと身体を小刻みに震わせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。