母親降臨
「あれ? 鍵が空いてる」
良平、桃花、詩織は学校から帰ってくると、家の鍵が空いてることに気づく。
家には誰もいないはずなのに、空いているのはおかしい。
このままいてもしょうがないので、良平を先頭にして家に入る。
リビングの方からテレビの音が聞こえることから、この時点で泥棒でないことがわかって三人は胸を撫で下ろす。
「お母さん、帰ってくるなら連絡してよ」
鍵が空いているのは良平の母親がいるからで、リビングのソファーに座りながらテレビを見ていた。
名前は
だからこの家にいるはずはないのだが、何か理由があって帰ってきたのだろう。
「ごめんなさい。少し驚かそうと思って」
「母さんのサプライズなんかいらない」
「良平は相変わらずつれないわね」
ため息をついてからそう答える静香。
感情を少し出してきている良平ではあるが、出す相手はほぼ桃花のみなので、親に対しても冷たく接しているように見える。
「あなたが桃花ちゃんね」
「え? はい……」
静香は桃花の方をジッと見つめると、口元がニヤけた。
桃花と詩織が仲良くなったのは高校に入ってからであり、だから静香と会ったのは今日が初めて。
いくら桃花が人見知りしない性格だと言っても、彼氏の親に会うのは緊張する。
「まさか良平がこんなに可愛い彼女をゲットするなんてねぇ」
二次元にしか興味がない良平がようやく彼女を作ったのだ。母親としては嬉しいことなのだろう、テンションがかなり高い。
「戻ってきた理由って桃花に会うため?」
「うん。だって気になるじゃない。恋人が出来るのは詩織が先かと思っていたんだけどね」
良平の質問に静香は肯定した。
いくら息子の彼女が気になると言っても、海外から戻ってくるなんて驚きだ。
少ししたらまた夫の元に行くだろうが。
「確認したんだからもう戻れば?」
「本当につれない息子」
いくら感情が希薄な良平だとしても、母親が家にいては桃花に噛みつくのに少し抵抗がある。
我慢が出来なくなって間違いなくするけども、できることならいない方が有難い。
「まあ、良平の顔が見れて満足だからいいのだけど。だいぶマシになったわね」
良平は桃花と付き合いだして、確実に良い方に変わっている。
他の人からしたらわからないが、静香は良平の少しの変化に気づいた。
何をするのも無表情、無感情の良平に、母親である静香はかなり心配していたようだ。
「桃花ちゃんはこれから私のことをお義母さんって呼んでいいからね」
「は、はあ……」
テンションが高い静香に、桃花もついていけていない。
「母さんのことはほっといて、俺たちは部屋に行こう」
「え? いいんですか?」
「いいよ」
このままいては質問攻めにあいそうなので、良平は桃花をつれて自分の部屋に向かう。
「これは来年には孫が見れるかもしれないわね」
二人を見て静香はそんなことを呟くのであった。
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