第百二十六話 神々の対談
「改修と言われましてもねぇ。完成されたフォルムだと思うざんすが。」
ゴブリン族の中でも珍しい、紫色の肌を持った、白衣を来た男が嘆く。
「腰蓑だけのゴブリンは確かに完成されたフォルムだとは思うZE!!でもNA!!他の奴らにゃ目のDOKUだっつーNO!!」
黒いローブに身をまとった骸骨が、陽気、だがどこかおどろおどろしい雰囲気を漂わせる声で言う。カタカタと骨がかち合う音とともに響く。
ゴブリン・ザ・キングを見上げるフルモ=トーンドロとコスマーロであった。
コスマーロの声を聞いて、警備を担当しているゴブリン達二人は一瞬身を竦めた。そして思う。俺達は此処にいる必要あるのかゴブ?と。
雷の聖域深部、ゴブリン・ザ・キングの格納庫。ここに殆どの神が集まっていた。唯一来ていないのは、水棲かつ巨大なイヌーンドであるが、彼も魔力による精神会話にて意見を述べられるようになっている。
魔界の最高戦力とも言える面々である、一応警備兵が立っているのだが、もはや警備兵が何かするよりも本人達が何かした方が早いであろうと思えた。少なくとも警備兵達には。それでもフルモ=トーンドロに任された以上、断るわけにもいかなかった。彼はゴブリン族の中でも極めて高い知性を持ち、そして長寿である。ゴブリン族は年功序列が強い。故に一万年もの間生き続けているフルモ=トーンドロなどは畏敬の的であった。加えて言えば、彼は"ゴブリン族のために"自然界進出を画策していた。成し得なかったとはいえ、ただ歳を振るい翳してアレコレ命令してくる連中とは一線を画する存在といえる。それ故に、彼の頼みを断るなど、彼らには選択肢にも入らなかった。
さて、そんな魔界のバランスを担う彼ら彼女らがここに集まった理由は幾つかある。
まず一つ目は今後の準備について。軍備と言った方が正確であろうか。宇宙から来たる怪物、ユーデアーラおよびその本隊。それに備えるために、今後各自がどのように動くか。それを話し合うためであった。
それだけであればわざわざ此処に来る必要は無い。此処に来たもう一つの理由は、久しぶりに顔を見合わせるためでもある。一万年という長い時間生き続けた神々にとって、色々な因縁もあれど、少なからず戦友としての意識を持っていた。今後に備えて久しぶりに直接会話したい、というのは、誰が言い出すでも無く自ずからそうなった結果である。
「まぁその件は後にしようではないか。問題は今後どうするじゃろ。それを話し合うためにわざわざこんなところまで足を運んだのじゃぞ。」
輝くカマキリ、アウローロが二人を制する。
「そうでありんす。アタシら全員であの魔王はんを助け、バケモンを退ける、そないな準備を考えなあきまへん。」
緑の巨大な鳥、ウィーウィンドがそれに続く。
「魔王も勿論努力はしてくれるでしょう。ですが、それに頼るだけではいけませんブヒィ。」
黄土色の猪、コリズィーオが鼻を鳴らした。
「うむ。我らも初代魔王の依頼を果たす時が来たという事だ。即ち、再来するあの悪魔めを退け、今度こそこの星に平穏を齎すという事を成すべき時が。」
赤き竜、ファーラ=フラーモが翼をはためかせながら言う。
『魔王のぉー、案はぁー、いいとぉー、思うんだがぁー、問題はぁー、作業員んー、だよなぁー。』
青き一角鯨、イヌーンドが通信でも相変わらず間延びした声で言う。
「左様。拙者らは戦力を提供出来ても、細かな作業に割くだけの余裕は持たぬ。それ故、民に労働を課すしかない。彼の方の悩みも理解出来るでござる。」
白銀の毛並みの狼、フロスティーゴが正座にも似た姿勢を取りながら言う。
なお、魔王から彼らに対しては協力要請しか行なっていない。にも関わらず彼の悩みが伝わっているのは、コスマーロとアウローロが彼の心の中を覗いたためである。「破廉恥な行為ではあるまいか。」とフロスティーゴは諫めたが、「彼からも言い辛い面はあるでしょうし、今回ばかりは良しとしましょうブヒィ。」とコリズィーオがそれを嗜めた。
そんなこんなで議題は、魔王を如何にサポートしていくか、という点に集中していった。
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