最強魔王に転生しましたが任期満了につき清き一票お願いします

第百十八話 合流

　ああもう、結局自然界に出してしまった。俺とジュゼはとにかく追いつくべく巨大な大穴を潜り自然界へと向かった。

　飛んでいけば、この速度ではすぐに近くの街に到達する。そうなればどんな被害が出てしまうだろうか。

「仕方ない!!」

　[Vote!!][プロミネンス!!]

　[Fire!!][ヘルマスター!!][ファイヤーバスター!!][プロミネンス!!]

　俺はゴブリン・ザ・キングの背中のブースター部分に照準を合わせ、トリガーを引いた。

　ドゴォォォォンという轟音と共にブースターが破裂した。

「あああああっ!!マズいざんすマズいざんす!!切り離すざんす!!」

　フルモ=トーンドロの一声で破裂したブースターが切り離され、ゴブリン・ザ・キングはアーチェリア公国近くの森林に不時着した。

「いやまだ動けるざんす!!行け!!ゴブリン・ザ・キング!!」

　その声に応えるように、ゴブリン・ザ・キングは再び立ち上がり、動き出した。

　動きを止めるべくもう一撃放ったが、ダメージこそ与えられても、動きは止まらない。

「くそっ、ダメか。」

「ブースターだけ推進力を高めるために別素材にしていたようです。他は耐魔力装甲ですね。」

　ジュゼが分析したその時、俺達が通ってきた大穴から、幾十人ものスケルトン達が飛び出し、ゴブリン・ザ・キングに攻撃を開始した。

　何人かには見覚えがあった。魔王城の兵士だ。

『魔王様!!』

　トンスケからの緊急連絡。用件はこの件であってほしい。

「どうした?」

『巨大なゴブリンが魔王城と城下街の上空を通過し、自然界に…。』

　良かった、この件だった。これ以外にあったらどうしようかと思った。

　…いや良くはねぇよ。

「ああ分かってる。今こちらも追ってる。奴は雷の神、フルモ=トーンドロが作り出した機械だ。自然界を襲おうとしている。」

『なんと!?』

「魔界には危害は加えないとは思うが、念の為警戒を怠らないでくれ。派遣出来る要員がいればーーー」

『既に派遣しておりますぞ。ですがやはり効いていないようで、速度に変化はありません。まっすぐアーチェリア公国へ向かっております。』

　やはりアレはトンスケの指示か。

「良くやった。派遣している奴らには現地民の避難を支援するよう指示してくれ。俺がもう一度止めてみる。」

　指示する必要も無かった。本当に助かる。

「連絡ありがとう。ーーーお前のお陰で本当に助かってるよ。苦労かけてすまんが、引き続きよろしく頼む。」

『……はい!!お任せあれ!!』

　トンスケは妙に元気な声で叫ぶと、通信を切った。随分テンションが高かったが、何かあっただろうか。

「魔王様は何と言いますか、鈍いのか聡いのか分かりませんね。」

「?」

　ジュゼの言葉の意味が良くわからなかったが、兎に角今はそれどころではない。もう少しで街に到達するのが見える。

「しっかり掴まれ、絶対離すなよ!!」

　ジュゼが頷いた事を確認してから、ガルダストリームプロトバロットレットで加速した。

「あああああああ前言撤回します速すぎですううううううううううう!!」

　俺はジュゼの言葉を無視しつつ、同時に彼女の腕を強く握りしめて、空を駆けた。

「むむむむむむ!!まーた来たざんすか!!」

　俺達が前方に回り込むと、それを目に留めたフルモ=トーンドロが地団駄を踏んだ。ジュゼは何やらグッタリしている。

「ですがもう無駄ざんす!!これで焼き払ってくれるざんすよ!!」

　ゴブリン・ザ・キングが口を開けた。

「させるか!!」

　[Vote!!][ディアストロフィズム!!]

　土の魔力を高め、地面を隆起させ、ゴブリン・ザ・キングを包み込む。

「無駄だと言ったざんすよ!!」

　その土の壁をゴブリン・ザ・キングの腕が打ち抜く。

「ダメか…。」

「ダメねぇ。」

　俺が声を上げると、横から誰かの声がした。ジュゼのものではなかった。

「あれ、サリア様?」

　ジュゼの声でそれがサリアのものだという事に気付いた。

「居たの!?」

「居たわよ。ちょうどアーチェリア公国に居てね。」

「丁度良い、力を貸してくれ!!」

「勿論。でもその前に、一つ聞いて良い?」

「ん?」

「ねぇ、アンタは自然界に犠牲を出せば魔界を守れるとしたらどうする?」

　いきなり何を言い出すのか。

「なんだ急に。」

「答えて。」

　真剣な顔で彼女は言った。今はそんな暇無いと一蹴するのは簡単だが、何か考えているのかもしれない。

「………『そんなバカな事を考えるくらいなら別の方法を考える』だな。俺は魔王だ。魔界のことを優先して考えなければいけないのは分かってる。……どうしても、どうしてもそれしか無いなら考えるかもしれない。でもそれは本当に最後の手だ。自然界に住む命も、魔界に住む命も、どっちも大切な命だ。そこに優劣なんて付けられない。どっちかを犠牲になんて、考えたくないな。」

　真面目に答えてみた。少し小恥ずかしい。すると彼女は温かな笑みを浮かべて言った。

「うん。…良かった、信じて。」

「え?」

「なんでもない。…ここは任せなさい。」

「へ?」

　そう言うと彼女は、見覚えのない新しいバロットレットを、開いた。

　[解・放!!]

　瞬間、溢れ出した光がブレイブエクスカリバーを包み込み、そして新たな姿へと変えていく。パネルはそのまま、剣が金色に輝きだす。

　バロットレットを装填し、トリガーを引くと、白銀の鎧を纏い、ブレイブエクスカリバーを地面に突き刺した男性の像が彼女の背後に現れ、そして弾けるように消えると、その場に残った男性の着けていた白銀の鎧がサリアの体へと装着されていった。

　[輝け!!][Shining!!]

　[眩き!!][Lightning!!]

　[燦然たる勇者!!][Radiant Brave!!]

　[[Rising!!]]