第576話【フィフスの加盟7】

<<ランス視点>>

第1陣が戻ってきた。


そして入れ替えに入る第2陣は緊張の眼差しでその光景を見ていたのだが、あまりにも珍妙で楽しそうな光景に呆気にとられていた。


それもそのはず、戻ってきた第1陣の多くがカップルになっていたのだ。


亜空間の中では1年近く居たわけだから、男女が仲良くなるくらい当たり前なのだが、待っている方としては僅か半日しか経っていないわけだから、不思議に感じてもおかしくはないのだろう。


しかし、これから亜空間へと向う第2陣の彼等には、もっと驚くべきことがあったのだ。


そう、亜空間から出てきたカップルのほとんどは、違う種族同士の組み合わせなのだ。


この会議に参加する者のほとんどは、他の種族を知らない者達なのである。


それが、楽しそうに次々と出てくる、異種族同士のカップルを見るのだから、驚くのも無理はない。


「さあ、お待たせしました、第2陣の方々、中の方へどうぞ!」


第1陣の最後に出てきたイリヤが第2陣を亜空間へと誘う。


頭の上にハテナマークを付けた第2陣の面々が、中に入り終わると、イリヤが舌をペロっと出して、「ちょっとやり過ぎたかな」と言いながら、亜空間へと消えて行ったのだった。


そのいたずらっ子のような顔を見て俺は中の様子を悟った。


「はぁー、やり過ぎだな。」



<<第2陣で亜空間へ入った人族18歳マリナ視点>>

大学の人権サークルに所属するわたしの元に『種族再編成プロジェクト』の話しが来たのは、2週間ほど前のこと。


わたしの星には人族しか居ないけど、人族差別はある。


人種差別に疑問を持ったわたしは大学入学と同時に人権サークルに入った。


なぜ差別は起こるのか、差別を無くすにはどうすれば良いか。


サークルではいつも先輩達に混じってそんな話ばかりに夢中になっていたわ。


「マリナさん、実はお父様から、『種族再編成プロジェクト』っていうのに参加しないかって言われてるのよ。


わたしは参加するんだけど、貴方も一緒にどう?


ほら、わたしのお父様って国際連合で働いているんだけど、他の星の様々な種族が集まるみたいなのよ。


一緒に来てくれたら心強いわ。」


サークルの終わりに憧れの部長にそう声を掛けられたのが嬉しくって、行きますって即答しちゃった。


そして2週間後、わたしは部長と一緒に、部長のお父様が働く国際連合駐在所まで来ました。


そこにはこれから一緒に行くであろう若者達が沢山います。



「やぁ、こんなところまでようこそ。君がマリナさんだね。


ユニスの父です。


参加してくれてありがとうね。


ユニスの言ってた通り、可愛いお嬢さんだ。」


あら、いやだわ。お嬢さんだって。


「初めまして、ユニスと言います。


本日はよろしくお願いします。」


「よろしくね。ちょうど今から説明があるからよく聞いておいてね。」




「皆さん、わたしの声が聞こえますかーー!


これから説明会を始めますので、前に集まって下さい!


これから皆さんには他の地域や他の星の方々と合流して頂き、こちらの時間で約半日、プロジェクトに参加して頂きます。


皆さんも楽しめる内容になっていますので、いっぱい楽しんで来てくださいね。


それで、1つ注意点をお話しします。


これから皆さんに行って頂く場所は、時間の流れがかなりこの星と違います。


大体こちらの半日は向こうでは1年くらいになるみたいです。


ですから、皆さんは、これから体感で1年間『種族再編成プロジェクト』に参加して頂くのです。」


1年間の言葉に参加者からはどよめきが起こる。


「あのぉー、質問良いですか?


泊まりに必要な物を何も持っていないんですが、大丈夫ですか?」


前の方から若い女性の声が聞こえてきた。


そうだよ、わたしも持ってない。


「大丈夫です。あちらには何でも揃ってますので。


グループに分かれて頂いて宿泊して頂くことになりますが、グループ毎に男女1名づつお世話係が付きますので。


そちらに言って頂ければ何でも揃うそうです。


第1陣の方々も満足して頂いたみたいです。


中には『自宅の枕で無いと眠れない』なんて方もおられたみたいですけど、それも入手出来たと聞いていますよ。」


俄には信じられないけど、説明してくれてるお兄さんがニコニコで自信満々って感じだから、信じてみようって気になるわね。


「他にご質問はありますか?


……無ければこれからあちらに向かって頂きます。


3列に並んて、この門を潜って下さい。」


前の方から3列に並び始めたので、わたしもそれにならって部長の横に並ぶ。


「マリナ、あれってたぶん転移門よ。」


「転移門って、あの他の星に一瞬で行けるってやつですか?」


「そうよ、その転移門。


ここにあるってお父様が言ってたから。」


噂には聞いたことがあるけど、それを潜った人を見たことが無いわ。


そしてわたし達の番になり、わたしはユニス部長と一緒に転移門に入って行ったの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る