第577話【フィフスの加盟8】
<<第2陣で亜空間へ入った人族18歳マリナ視点>>
ユニス部長と一緒に転移門に入ったマリナです。
どんな事になるのかドキドキです。
恐る恐る入ったその先は御伽話のような光の渦があるのか…と思いきや、普通の大会議室でした。
これが転移門だって言われてなければ、きっとなんの違和感も無かったかもしれません。
大学の教室みたいに教壇からおうぎ形に拡がる段々席。
端から端まで上手く見えないくらいの大きさで、何百ものモニターが天井からぶら下がっている。
さっき入り口に書いてあったけど、ここは第8会議場なんですって。
ということは、これと同じような巨大な会議場が最低でも7つあるってことよね。
とんでもない広さね。
「さぁ、こちらの方にお座り下さい。
飲み物は何がよろしいですか?」
そんなことを考えていたら、イケメンスマイルが眩しい係員のお兄さんが、わたし達を席に誘導してくれたのよ。
「わたしはアイスティーで、マリナは何にする?」
ユニス部長の問い掛けに、我に戻って「お、同じ物を」って思わず言っちゃった。
「かしこまりました。」
お兄さんが軽く頭を下げて、持っていたお盆をすうっと振ると、そこには2杯のアイスティーとシロップやミルク、レモンなんかが現れた。
座っている席のテーブルにそれぞれ置いてくれる。
そして、いつの間に出したのか、美味しそうなケーキも、アイスティーの隣に並んでいたのだ。
「何か不足がありましたら、お呼び下さい。」
深々と頭を下げて、お兄さんがニコッと笑い、去って行った。
「美味しいわ!」
とりあえず色気より食い気よね。
アイスティーもケーキも最高よ。
あちこちの席で感嘆の声が上がっている。
これだけの人数がいるはずなのに、そんなに大きなざわめきにならないのは、防音の魔法でも掛かっているのかしらね。
しばらくユニス部長とおしゃべりしながら、楽しいティータイムを過ごす。
「後10分で、ガイダンスが始まります。席に着いてしばらくお待ち下さい。」
アナウンスが流れると、席を立っていた人達が、続々と自分の席に着いて行く。
やがて時間になると、照明が少し落ちて、全てのスクリーンに同じ映像が映し出された。
「皆さん、こんにちは。
わたしは国際連合で働いていますイリヤって言います。
これからこちらでの1年間、一緒に楽しみましょうね。」
わたし達と同い年くらいに見える女性が満面の笑みで、わたし達の緊張を和らげてくれる。
その優しさが溢れ出す気品というかオーラというか、ひと目で魅力されちゃった。
その時は全く気付かなかったけど、国際連合の総長ランス様の妹君で司令本部長でもある『聖女イリヤ』様だったんだね。
その後モニターには、ここでの生活についてのガイダンスが流れ、細かなところまで説明してくれてる。
転移門に入る前に聞いていた通り、各班のお世話係さんが全てを用意してくれるようだ。
ガイダンスに映し出される居室には1年間暮らすには十分な調度品や備品、設備が整っており、なんの問題も無さそうね。
ひと通りガイダンスが終わると、いよいよこのプロジェクトが始まる。
最初はこのプロジェクトの主旨について。
気付かなかったけど、この会議場には人族ばかりが集まっているみたいで、人族を中心とした人権問題や種族差別・偏見の歴史が重厚なナレーションと共にモニターから溢れていてくる。
その中には種族間の戦争や、強制的に奴隷にされる人達や奴隷に対する迫害シーンもあった。
小さな獣人族の子供が鞭で打たれている映像には思わず目を背けそうになるけど、しっかりと目に焼き付けないと。
これも過去に起こった真実なのだから。
「今、見て頂いた映像の中には、現在のものも多くあります。
これは過去の歴史だけで無く、様々な星で現在進行形の問題なのです。
我々は種族などには囚われず、誰もが平和を享受出来る社会を創らねばならないのです。」
ゆっくりと、どこからともなく聞こえてくる重厚な声。
そしてモニターには会議場中央の演壇が映し出された。
そしてそこにいたのは、国際連合総長ランス様の神々しいお姿でした。
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