第547話【教育が必要です3】
<<白石弥生視点>>
白石弥生です。今日も元気に国際連合大学創設に向けて頑張っています。
本日のお客様は、トーラス星のシトルス製薬の会長様です。
トーラス星のシトルス製薬と言えば、国際連合加盟星の中でも2、3位を争うほどの大製薬会社です。
1、2位じゃないのって?
1位はぶっちぎりの会社が別にあるんですよ。
「これはこれは、白石様..だったかな?申し遅れました、わたしはシトルス製薬のシトルスと申します。」
ほら、マウントをとりに来たよ。このやり方って何処の製薬会社もだいたい同じなんだよね。
わたしのことを知ってるくせに、『だったかな』なんて自分を大きく見せようとするんですよね。
「白石弥生です。初めまして。本日はよくお越し下さいました。」
「いえいえ、わたしどもは民に健康を齎し安穏を提供するのが企業理念でございますからなあ、どこぞの教会みたいにお祈りするだけのまやかしとは違いますので。」
「ええ、よく存じております。創業者でもあるシトルス様の経営理念にはわたしも感銘を受けておりますひとりですので。」
もちろん社交辞令ですよ。こいつ、かなりあくどいことをして稼いでることも良く知ってるもの。
「そうでしょう、そうでしょう、我が社と国際連合大学がタッグを組めば、全宇宙に最先端の薬が行き渡り、全ての民が安心して暮らせるようになるのは間違いありませんなあ。」
教会と一緒でこいつらも言葉を合わせてるんじゃないかってくらい同じことを言うのよねえ。
シトラス製薬って安い後発医薬品を、薬のことをよく知らない発展途上星に新薬だとか言って、高く売りつけて儲けてる悪徳企業じゃない。
今回も国際連合大学に集まる最先端の情報を盗み見して、あわよくば新薬事業を展開しようとしてるんじゃないの?
「.....それでですね、わたしどもが協力させて頂くことで....であります。
さあ、こちらに契約書をお持ちいたしましたのでサインを頂ければ。」
「ええ、シトルス様、お話しはよく理解出来ましたわ。
御助力いただける旨、感謝いたします。国際連合大学も今は未だ創設途上。
シトルス製薬様もご助力頂けるのでしたら、更に良い学び舎とすることが出来るでしょう。」
「も?シトルス製薬様も、って仰いましたか?」
「ええ、そうです。有難いことに既に数多くの製薬会社様からのご尽力頂けるお話しが来ておりますの。
そして全ての製薬会社様にはこちらの契約書でサインを頂いておりますのよ。」
「...拝見しても?」
「ええ、どうぞ。シトルス製薬様ほどの大店であれば損はないと思いますが。」
「ふむふむ、製薬会社で協力連合を作り、その中で新薬や後発の製造分担を決めると。
販売価格は連合で素案を作り、国際連合総会で決定する...と。」
「シトルス様どうですか?協力連合に参加頂くことになりますが、その中で理事会を作りますので、シトルス様にも是非ご参加頂ければと。」
「そうですな。理事会か...まあ、我が社ほどの規模を持つ会社も無いだろうし、理事長になれば....
分かりました、サイン致します。」
「有難うございます。これで国際連合大学の立ち上げもスムーズにいきそうですわ。」
「全力を尽くしますので、ぜひ頑張りましょう。」
ちょっと油っぽいけどしようがない。
サインしたばかりの契約を机の上に置いて握手をした後、シトルス会長は上機嫌で部屋を出ていったのです。
後日、初理事会での出来事。
「な、なんだと!!なんで、なんでラスク星の『シルビア医薬舗』がいるのだ!!!
こんな公の場に出てくることなんて今まで無かったじゃないか!!」
「なぜと言われましても。
我が社の創設者であるシルビアの愛弟子のイリヤ様から頼まれましては。
医学の発展は我が社の社是にも書かれておりますからな。今回のような一大プロジェクトに係わらないわけにはいきますまい。」
「「「いや、シルビア医薬舗さんがおられるのであれば、理事長はもう決定ですな。よかった、よかった。」」」
「「「いかにも、いかにも。シルビア医薬舗さんだったら安心して理事長を任せられますよ!」」」
そうです、加盟星ぶっちぎり第1位の医薬品会社は、イリヤ様の息のかかったシルビア医薬舗なのでした。
かくして、シトルスさんのささやかな野望はここに潰えたのでありました。
シトルスさん、別にわたしは騙していませんからね。聞かれなかったから言わなかっただけですからね。
へへっ。
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