第537話【異世界保険機構(AHO)2】
<<イリヤ視点>>
お母様の突然の思い付きで始まったこの騒動。
ここまできたら、思いっ切りやるだけです。
「皆様、ご多忙の折、こんなにもお集まり頂き、感謝致しております。
さて、皆様は既にご承知のことと思いますが、この度国際連合の1機関として、『異世界保健機構』が発足することとなり、わたくし、カトウ・イリヤがその初代総裁の任をお預かりすることとなりました。」
「うおおおーー!!!」
さすがは2万人のどよめき、会場が割れんばかりです。
亜空間だから絶対に割れませんけどね。
どよめきが収まるのを待って、話しを続けます。
「皆様のご尽力もあり、未だ構想段階でしか無いこの組織に対する加盟星の国民の皆様方からの反響は非常に大きいと聞いております。
これも皆様が心底欲しておられる切なる想いの結果だと、AHO設立に向けての大きな励みとさせて頂き、感謝の念にたえません。」
あらあら、一部の席からはすすり泣きが聞こえてきますわね。
やはりラスク星の人達には感慨深いものがあるのでしょうか。
あっ、真ん中の方でもすすり泣きが始まりましたね。
こういうのって連鎖しちゃうんですよ。
こんな時は少し溜めを置いて…
「わたし達は国際連合に加盟頂いております各星が平和で健康な生活を過ごせるように…との考えのもと、このAHOを創設し、育てていきたいと強く決意しております。
AHOには各星のご協力のもと、最新の医学知識や医療魔法・魔道具、そして古来より伝わる民間医療法等、ありとあらゆる知識を集め、その検証を行いながら、体系的に纏めて、広く皆様にお伝え出来るようにしていきます。
それと同時に、今も病に苦しんで居られる沢山の方々を支えるための、医療組織『ナイチンゲール隊』を各星の王族の方達のご協力のもと、各星に作っていきたいと思っております。
つきましては、次回の国際連合総会の折に、ご協力頂ける星は、大使様にお考えの旨お伝え頂き、ご教示頂けると幸いです。」
パチ、パチ、パチ…………………………
鳴り止まない拍手の中、無事に挨拶を終えることが出来ました。
さて、万来の拍手に包まれて壇上を降りたわたしのところに、お兄様が慌てて近寄って来られました。
「イリヤ!すぐに大会議室に戻ってくれ!
各星の大使で、ごった返しているんだ!」
よく聞いてみると、先程までの記者会見の様子は、各星で生中継されていたみたいで、リップサービスのつもりだった各王族への言葉を受けて、我先にと、大使を遣わしたようなのです。
いや、それにしても早過ぎですね。
もしかすると、記者会見会場に大使がいて、そのまま来たのかも。
まぁどちらにしても、大会議室に急ぎましょう。
大会議室に到着すると、お母様が若い女性達に囲まれています。
それも、年若い娘さんばかりにです。
頭ひとつ高いお母様に群がっているのは、300人くらいでしようか?
いえいえ、少し離れて物欲しそうに見守っている少女達が数100はいますね。
どうやらお母様の近くにいる方達は古参の国際連合加盟星の王女様達のようです。
わたしもそのうちの何人かは見覚えがあります。
「あ、あのう、イリヤ様、イリヤ様でございますか?
お初にお目にかかります。
わたくし……………」
会議室の扉を入ったばかりのところで、中の様子を伺っていたわたしを見つけた少女のひとりが、意を決したようにおずおずと声を掛けてきました。
その声を聞いたお母様を遠くから見守っていた少女達が一斉にわたしに群がって来たのです。
大会議室はちょっとしたパニック状態です。
あら、どうしましょうかね。
今お母様とわたしは、別の大会議室内に急遽設置されたお茶会会場で、1000人近くの王女様達とお茶会の真っ最中です。
わたしの記者会見を耳にした各星の王家が大使と共に王女も寄越したようで、たまたま近くにいたお母様を見つけた王女のひとりが、お母様に声を掛けたことで、先程までのバニックが起こったようです。
お母様だけでなく、わたしもパニックの渦中の人になった後、その光景を見たお兄様の『沈静化』魔法で大人しくなった王女達をここに連れてきたわけです。
さすがは王女達と言うことでしょうか。
あれだけ集団心理の中でバニックになったにも関わらす、お茶会の席では気品ある王族の佇まいを見せていますね。
元の会議室ではお兄様が大使達を相手に、事務的な話しをしてくれていますので、こちらは女同士でお茶会を楽しみましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます