第528話【ランス魔物狩りを楽しむ1】

<<ランス視点>>

お父様が創ったセカンズ星は順調に文明を発展させている。


加盟星の中には大使や王族が利己主義に走り、荒廃しているところもあるし、他星との交易合戦に敗れ、他の星の属国と成り果てたところもある。


違法薬物の密輸入を見逃してしまい、国民に薬物中毒者が蔓延して、国としての機能を失ってしまった星もあった。


お父様が言うには、アースの『大航海時代』のようだそうだ。


「ある程度、星間の交易が進むとこんな具合になるのは、仕方がない」と苦虫を噛んだような顔のお父様は少し悔しそうだが、これも自然の真理かと、諦めムードだな。


「ランス、俺が学んだ大航海時代と今の国際連合加盟星の光景は、よく似ている。


ある程度までは許容もするが、許せないこともあるんだ。


何だと思う?」


「さあ、何でしょう?」


「武力による侵略や武器を売り付けて内乱や戦争を起こさせる行為だ。


実際、アースの大航海時代にも、それはたくさんあり、貴重な文明がいくつも失われた。

これだけは絶対許せるものではないのだ。」


「だから、お父様は今回のホンジュラの件も積極的だったんですね。」


「ああ、ホンジュラはある意味生贄みたいなもんだな。あんな星は加盟星だけでも数多ある。


その中にはこれからの国際連合にとって必要な文明を持つ星もあるのだ。

一定のルールで排除するわけにもいかないだろう。


だからこそ、ホンジュラには見せしめになってもらったのだ。


今回の査察でも他星に対する大量の犯罪行動の証拠が見つかったんだろ?


ランス、今後のことも考えて大鉈を振うべきだ。たまには悪役も良いぞ。」


「まあ、もう人間じゃなくなったんですからどっちでもいいですけどね。

でも対外的には人間ってことにしておいた方が都合が良いんですよね。」


「そうだな。まだお前のことを人間だなんて思っている者がいるのかどうかも怪しいがな。」


今回の査察でホンジュラ星に対する危険品目の輸出は完全に停止させた。


もちろん、輸出についても大幅に制限を掛けている。


今回のセカンズ侵攻に、王族が絡んでいることが明らかになったので、主要な王族についても更迭し、こちらの選んだ者を施政者に仕立てた。


これでこれまでの悪しき文化が収まってくれれぱ良いが、しばらくは徹底的に監視してやろう。


そしてそれを国際連合総会で取り上げることで、他の星への牽制にもなるに違いない。



「お兄様、しばらくお忙しかったのですから、少しお休みになられたら如何ですか?」


「そうだな、ここのところ確かに忙しかった。


寝なくても食べなくても問題無い身体になってからは、ほとんど休みを取って無いかも。


でも、それはイリヤもそうじゃないか。」


「わたしはお兄様みたいにいつも張詰めているわけじゃありませんよ。


適度に気を緩めていますし。


お兄様は昔から真面目なんですから。


全然変わらないですよね。ふふふっ」


「そうだな、自分では頑張っているつもりなんだけど、お父様のやることを見ていると、まだまだだなぁって思っちゃうんだよね。」


「お父様は特殊なんですよ。


大体、人間から神になって、そこの管理職にまでなっちゃうんですもの。


ほんと、お父様は異常なんですから。


お母様もお兄様の健康を気にしてましたから、有無を言わないで、とっと休んで下さい!」


「そうですよ、ランス様。

ランス様が休んで下さらないと、私達も休み難いのですから。


仕事はこちらで片付けておきますから、早く休んで下さい。


最低でもひと月は休んで下さいねっ!」


事務長にまで、安めと念を押されてしまった。


ひと月も休んで、何をしたらいいんだろう?



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